チャンネルICC
「HIVEのすゝめ」はウェブ版HIVEで公開されているコンテンツから,アーティストや研究者におすすめの数本をセレクトしていただく企画です.2020年度,緊急事態宣言発出などに伴う休館期間にスタートし,2021年9月9日時点で17名のセレクターによるコンテンツを公開しています.
企画概要のテキストにもあるように,2006年に公開したウェブ版HIVEでは,現在500を超えるコンテンツを公開しています.1997年の開館以来制作している展示・イヴェントの年度ごとの活動記録映像,アーティスト・トークやライヴ・イヴェントの一部,映像コレクションの一部である「インタヴュー・シリーズ」の一部も視聴いただけます.
コロナ禍では,大学をはじめとする教育機関やその附属図書館や美術館,博物館,劇場や映画館,スポーツ会場などの施設の入場・利用が制限される状況が続いています.1点しか存在しない作品を肉眼で見る体験,パフォーマンスをその空間や衣装の衣擦れの音まで含めて鑑賞する機会,大きなスクリーンに映し出される映画を他の観客と時間を共有しがなら見ること,学校という場で受講する時間がおびやかされていることは,それらを職業としている方々,これまでそれらを享受してきた観客側にも少なからずストレスをもたらしています.
その反面,多くの施設で新たな取り組みとしての配信プログラムや,これまで出版物や配布物としていたテキストや資料の積極的なオンライン公開,ウェビナーの開催など,情報を発信する側にとっても受け手にとっても選択肢が格段に広がったことは「新しい生活様式」のプラスの側面としてとらえている方も多いのではないでしょうか.
学校のあり方や授業の進め方が従来と大きく変化した2020年度以降は学生だけでなく先生方も授業準備の変化も含めこのような状況に適応していくことが求められてきています.大学で講義をされている先生の中には,テーマに沿ってHIVEコンテンツを指定され,それを視聴してレポートを提出する課題としてHIVEを活用してくださっているというお話を伺うことも以前にも増して多くなってきています.また,寄稿してくださったセレクターにも大学で教鞭を取られている方も多く,「授業で活用するなら」というテーマでコンテンツを選定してくださった方々もいらっしゃいます.
「HIVEのすゝめ」では,セレクター自身が関心を持つ分野やアーティストにフォーカスしたり,自身の制作や研究の方向性に大きな影響を与えたイヴェントや人との出会い,アーティストの記録映像をたどったり,イヴェント開催当時の記憶やエピソードとともに紹介されるなど,さまざまな視点からコンテンツが取り上げられています.まずは読み物としてこのプロジェクトに触れていただき,その中で気になるコンテンツから視聴をしてみていただけたらと考えています.
ピンポイントで「知っていること」からオンラインで検索すること,SNSでハッシュタグやトレンドから検索すること,どこかにいつの間にかまとめられた情報を得ることは,インターネット普及以前に書籍や映像資料を探していた頃とは比べ物にならないほどのスピードと情報量で対象にたどりつくことが容易に可能となっている一方で,「知らなかったこと」に出会う機会はどうでしょうか.
メディア・アートの分野では新たな技術を用いた表現が「最先端」と評されることもありますが,表現方法の根底にあるアーティストの意識や技術と芸術の接点を探る制作での試行錯誤には時代や国・地域,言語を超えて共通するものがあるかもしれません.
2021年度に入ってからは,青柳菜摘さんによる物語のような文体での「鍵のついた白い家」と鈴木英倫子(すずえり)さんによるアーティストならではの視点でのセレクトを公開しましたので,ぜひご覧ください.
「HIVEのすゝめ」が,ICCの活動だけでなく,アーティストと研究者、技術者の協業の先行事例やその時々の時代背景に触れてみるきっかけとなれば,という期待も込め,今後もこの企画は継続していく予定です.
「HIVEのすゝめ」セレクター(公開順)
久保田晃弘/細井美裕/谷口暁彦/水野勝仁/徳井直生/馬定延/遠藤みゆき/和田夏実/三原聡一郎/市原えつこ/横山由季子/城一裕/飯田豊/竹下暁子/永田康祐/青柳菜摘/鈴木英倫子(すずえり)
[A.E.]