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序文 - ルーディ・フックス
変移する境界線 - ティモシー・ドラックレイ
序論 - レイネ・コエルヨ
アート,メディア,メディア・アート
マリエケ・ファン・ハル

入場料
展示作品




《時間/断片》
《ボーリアリス》
《O.T.S》
《アイ(私/眼)》
《ロジック・オブ・ライフ》
《内なる地図書》
《目撃者》
《フェイス・ショッピング》
《クレジット・アート》
《ファウンドリング(捨て子)》
《浴女たち》
《スキッピング・マインド/忘却についてのフィルム》
《リ・アニメイションズ》
《マラカイボ,夜行く船》
《ヘヴン》
《サクリファイス》
《レトリカ》
参加作家
 
1998年11月13日(金)〜12月27日(日) [終了しました.]





展示作品


《O.T.S》
"O.T.S"

1995年
ヤープ・デ・ヨング




インタラクティヴな彫刻:展示ケース,8×4個のガラス球,
8台のモニター,32個のプリズム,プッシュボタン


現在において未来を見ることは可能であろうか.即座に次なる問いへと収束する不可能な問い.しかし,現在とは何だろうか.それは曖昧さなしに十分に秩序つけられた普遍的に正当な全体なのか,あるいは,現在とは,われわれがほとんど把捉し得ないイメージと出来事のダイナミックなモザイクなのか.後者の定義は,われわれの時代にとってより真実であろう.メディアによってわれわれは,自由に終りなき情報の大洪水を経験している.しかし,この情報はまた,極度に不完全であり断片的で可変的である.われわれは,はるか以前には決してそうではなかったが,かつてに比べてより現在についての洞察を得てきたように思える.しかし,同時にわれわれはそれについての理解を喪失しつつあるのだ.実際に何が起きているかを理解することがどんどん難しくなってきているのである.

ヤープ・デ・ヨングの『水晶球』は,観者の接触で,万華鏡のイメージを見せるインタラクティヴなオブジェである.これは様々な源泉から構成されている.つまり,ガラスの球へ投影されたテレビのイメージ,CGのパターンとアニメイションの混合である.テレビ画像上の運動との相互作用の中で,抽象的で断片的なイメージが生ずる.それは恒常的に変化している.球にタッチすると,それはチャンネルを変え,結果的にイメージとサウンドを変える.

どのような未来を『水晶球』は予言するのか.実際,見る者としてはイメージの出自を突き止めることはできない.それらのメッセージ,それらがわれわれに伝えなければならないことは,色彩と形態の美的で生き生きとしたパターンに対する好奇心では理解不可能である.さらに,接触は球に影響しうるがそれをコントロールすることはできない.『水晶球』は予言的である.しかし,それが未来としての現在を示し,この現在におけるわれわれの問題含みの立場を例示している意味においてである.

デ・ヨングの『O.T.S.』(公共テレビ彫刻のオランダ語におけるイニシャル)は,ふたたび,水晶球を特色としている.デ・ヨングは,もはや時代遅れになった,自由に設置可能な美術館の八角形の展示ケースに32個の球を置いた.そのケースは木材とガラスで製作され,上から覗き込める多くの仕切りへと分割されている.前作と異なり,この作品において,「触れて下さい」は,ここでは用いられない.つまり,マジック・ボールは,伝統的な美術館の作品として展示され保護されているのだ.

あなたは,恒常的に変化するイメージを見る.それは,多かれ少なかれ「理解可能」である.完全に明白なのは,これらが通常の主流なテレビ画像ではないということである.これらは,ほとんど芸術なのである.デ・ヨングは,P.A.R.K.4DTVのためにオランダのアーティストによって制作された,単一のヴィデオ・ソースからそれぞれのイメージに分割され,四個の球に分配された放送を使用している.

『O.T.S.』で,デ・ヨングは,明示的に(芸術の)テレビ画像を美術館のコンテクストに置き,「彼の」芸術作品を他者の作品で充たすことによって,結果的に彼自身の形式を他者に委任し,多くの慣習的な芸術のコードとプレゼンテーションの方法を反転させたのである.彼は,美術館のリアリティの価値とエレクトロニックな存在の価値を一つの場所に導き入れる.それは,両システムの相対性を証明するためのようでもある.『O.T.S.』におけるクリスタル・ボールは,『水晶球』におけるものとは,別の何かを予言しているように思える.つまり,芸術の条件と未来である.

*この彫刻のためにヤープ・デ・ヨングは,32人のアーティストによって制作された異なるヴィデオ作品を使用した.これらの作品は,夜間,1時から2時にかけてアムステルダムのケーブルTVであるPARK4.D.T.V.で見られる500を越える有線テレビ放送から選ばれたものである.

アーティスト:ヤン・ディートフォルスト,ヨプ・ホルスト,クラウディア・ケルゲン,ディック・タウンデル,ヤスパー・ファン・デン・ブリンク,ドクター・デュファルス,マーテン・スペンガー,ビル・スピンホーフェン,リンダ・ファン・ボーフェン,リュウ・タジリ,インツェ・フフツ,アリエン・ヴェスターディープ,A・M・コパー,ヤリフ・アルター・フィン,スラウク,クルパースフーク,ヒル・スネイダース,イェルン・コーイマンス,ニリット・ペレド,ヴィンフリード・エファース,ペーター・メルテンス,マールテン・プルフ,エルスペト・ディドリクス,ディルク・パーマン,R.E.L.,マルチン・タケン,ヴィール・スースケンス,マックス・キスマン,ハルコ・ハーフスマ,レネイ・ベークマン,デ・レイケ,デ・ローイ,カープ・アンド・ボリス・ル・ブッフ

ヨリンデ・セイデル
翻訳:上神田敬