単純なかたちが一定のルールでつながり,全体を構成するしくみは,人工物,自然現象を問わず現れる普遍的な原理です.美術家の野老朝雄はこの原理を「個と群」と呼び,多様につながる作品群を生み出しています.「個と群」の背後には高次元の幾何学や非線形の数理や対称性などが存在し,美術や音楽などの芸術,建築や宇宙構造物,アルゴリズムやデータ構造,結晶や準結晶の原子配列,タンパク質の折りや自己集合,群れのふるまいなど,さまざまな領域の学問や創造へとつながっています.
東京大学教養学部で開講されている「個と群」(文理融合ゼミナール)では,受講生が野老と東京大学の舘知宏と協働して,「個と群」の創造プロセスを実践しています.創造のプロセスは必ずしもまっすぐには進まず,つくられたもの(Artifacts)はしばしば意図しない副産物となります.このような副産物からは,芸術,科学,情報,工学,数学をまたいだ豊かな学際的研究領域が広がっています.
この活動を端緒として始まった展覧会「つながるかたち展」はこれまでに2回開催されており,今秋にも「つながるかたち展 03」の開催が予定されています.「ICC アニュアル 2023 ものごとのかたち」では,そのスピンオフとして,かたちをつくることから始まる学術の連鎖を紹介します.
出展作家:
野老朝雄,舘知宏,今田凜輝,風祭覚,上條陽斗,木島凪沙,田中浩也,出口広哲,天童智也,鳴海紘也,西本清里,平本知樹,堀川淳一郎,堀山貴史,割鞘奏太
展示構成:金岡大輝
グラフィック:小木央理
本展示は下記の支援を受けています.
JSTさきがけ数理構造活用「自己組織化による構造折紙パターンの創生」
JST AdCORP 「計算機を活用した設計技術と製造技術による人と環境にやさしい人工物の実現」