「ICC アニュアル」は,これまで「オープン・スペース」展として開催してきた展覧会を,コンセプトを継承しながら, 6ヶ月間の長期展示としてリニューアルするものです.
新しいメディア・テクノロジーの動向に伴って,それに触発され,更新される,私たちの意識のありようや,現代の社会におけるテクノロジーのあり方を,メディア・アート作品をはじめ,現代のメディア環境における多様な表現によって,別の見方でとらえていきます.
現在の私たちの生活環境には,コンピュテーショナルなテクノロジーがもたらしたシステムがさまざまに実装されています.人間とコンピュータを媒介する技術の変遷は,アルゴリズムが生み出す,生命的な振る舞いによって,より自然に私たちの生活環境に浸透し,また,将来もますます進んでいくでしょう.
一方,自然の現象に見られる再帰性や偶然性を読み解き,自然のメカニズムを解析することで,テクノロジーの側からもうひとつの自然をシミュレーションし,新しい生命のあり方を定義することや,自然や生命,私たち自身をとらえ直すことが可能になりました.
このような「組織化する無機的なもの」の時代において,デジタル技術や自然の現象から生み出された新しい「生命的」なシステムとしての環境からインスピレーションを受け,そのシステムとの相互的なフィードバックによって生み出された作品,気候変動やジェンダーなどの社会的な問題,NFTやメタヴァースなどの同時代的な技術動向にもとづいた,広がりをもった作品の数々によって,これからのテクノロジーのあり方を考えます.