台の上に乗った複数の振り子が，はじめは個別に，それぞれ独自のタイミングで反復運動を繰り返しています．やがてそれぞれの振り子は，全体で一様に振れるようになって，一つの台の上の振り子が全て同期するようになり，そこから次第に揺れが収束していきます．重りが動くことで，またそれぞれの振り子がランダムに揺れるようになりますが，しばらくするとまた振り子は同期した状態になります．さらに，各振り子の揺れを検出し，それに合わせてコンピュータから発される音が，さまざまなパターンとなって重なり合い，ミニマル・ミュージックにも通じる構造を生み出していきます．

《syncrowd》は，「同期現象」と呼ばれる，複数の異なる振動やリズムをもったものがたがいに影響しあい，そのタイミングを同期させてしまう自然現象を利用したキネティック・サウンド・インスタレーションです．五つの《syncrowd》*が，それぞれの大きさによって異なるテンポで同期と非同期を繰り返しています．個としては単純な振り子の振るまいが，うねりを持った状態や，無秩序な状態を生成しながら，環境を自己組織的に複雑に変化させ続けるプロセスを体験することができます．やがて，各振り子は，フレームの振動を通じて互いに干渉しあいながら，振り子の群れ（crowd）を形成し，物理法則に則って，まるで制御されているかのように同期（sync）していきます．

プランナー／コンセプター：福地諒
ハードウェア・エンジニア：中根智史
ソフトウェア・エンジニア：松山周平
ロボット・エンジニア：瀬戸悠介
サウンド・プロデューサー：小野寺唯
アーキテクト／エクスペリエンス・デザイナー：板垣和宏
サイエンティスト：菱田真史
プロデューサー：林重義