ICC
都市

児玉哲彦
気になる展示作品: 《ambient.lounge》
「場所」というものはかつてはフィジカルに「いま」「このあたり」という点の指定と対応付いていた。 それは人類学者のホールがいうように、人間の感覚器の到達範囲で規定されていた。ところが、ITによって離れた時間と場所との間がつながるようになると、 僕達の感覚は変容する。電車の中のケータイが、ウォークマンの音漏れが、なぜ規範を逸脱していると感じさせるかの答えがそこにある。 それはマクルーハンが能天気に予想したように一つの村に縮小する地球じゃなく、あそこはこことつながっている、ここはあそことつながっていない、という ワームホールによってねじくれたフラグメントな世界を僕達にもたらす。 今や建築や都市計画の主要な課題は、ボリュームやカタチの比例関係じゃなく、このゴルディオスの結び目をどう解きほぐすかなんだよ。
投稿日時:Wed,18 Oct 2006 12:20:22

清水友理
気になる展示作品: 《Evolving Sonic Environment》
茶道では、ふすまを開ける際、三段階を経ることを作法とする。①手掛りを摑み手が入る分を開ける②枠 を摑み半分まで開け自身を見せる③手を代え全て開く つまり、歴史的に物理的な他者との距離は漸次的移行にある。30年前にルフェーブルに”空間の生産” と云わしめた無作法が今尚ある。都市を俯瞰すれば可視的に見える風景と、眼に見えない事情で建つ風景とのズレが引き起こす、微かな不安、居心地の悪さ、若 しくは場所に対する無作法への苛立ち。これらの都市・建築・場所への問題に、プロブレマティックな意識を持つのなら、我々が扱う素材は、木、コンクリー ト、ガラス、鉄だけではないだろう。詰める先は、表層の見たことのなさに表現の域を求めるのではなく、先に挙げた歴史の軸線上にある、人間−環境系に根ざ した、場所の、空間の構築だ。今までの素材ではできなかった、デリケートな質感を持った肌理があるはずだ。そこにITという素材の可能性を求めたい。それ を伝達する物理的な“site”としての場。そこに場所の、空間の力があると信じているし、究極的にはそのコネクティングによって生かされていると想う。
投稿日時:Thu,19 Oct 2006 17:41:33