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1996年2月 [終了しました.]
NTT/ICC推進室
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トータル・アート |
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歌田:お話をうかがっていると,「パソコン倶楽部」でもプログラミング講座をやらないとっていう気になっちゃいますね(笑).
岩井:僕は,プログラミング講座は必要だと思いますよ.
森脇:岩井さんも一貫して自分でやってますね.ハードもやるしソフトもやる.そのSGIですら自分でプログラムして使おうとする一貫した姿勢がある.
岩井:それをしないとほんとうに自分のものにならない.映画をつくっていたころから,なんで自分で音楽はつくれないんだろうというフラストレーションがすごくあった.やっぱり自分がつくったものに全部責任を持ちたいというのがあるんですね.もちろん,物理的に無理なものは発注したり手伝ってもらったりとかするけど.
森脇:岩井さんは,アーティスト・イン・レジデンスで,もっとエンジニアとがっぷり組んでコラボレーション的にやってるのかなって想像してたんですけど.
岩井:海外の作家でそういうふうにうまくやってる人たちもいるんだけど,僕は,そういう人たちの作品で「これはすごい」って思ったことってあんまりないんだよね.やっぱり自分で全部やってる人のほうが「心」が入ってる感じがする.ヘンな言い方なんだけど,そういう感じがしちゃう.
森脇:よく,永遠のテーマとして,「アートとエンジニアリングの出会い」ってありますよね.それがうまくいかない理由って岩井さんにはわかりますか.
岩井:やっぱり僕ら人間として,作品のいろんなところを感じとってしまう.表面的なものだけじゃなくて,すごく細かいディテールとか気配りみたいなものを自然と感じてる.そういう見えないこだわりが作品のかなめにあるんだと思う.だから,やっぱり発注されてつくられたものって,ちょっとちがうぞっていう感じがする.
たしかに,優秀なプログラマと組んだら,すごい作品ができるかもしれない.プロダクツならそれでもいいかもしれないけれど,アーティストの作品として発表する以上,プログラマとのコミュニケーションがどのぐらいうまくいってるかによって,作品の質とかディテールはやっぱり変わりますよね.そのコミュニケーションの部分に,どうしても作家のパワーがいってしまう.それで,「もう少しこうすべきじゃないかな」と思うような作品が多くなる.細かいところの配慮がなかなか行き渡らない.
もちろん僕にも限界はあるんで,コラボレーションというやり方もやってみたいとは思います.いままでは,それを続けていくには,人間関係をうまくしなきゃいけないとか,いろんな問題が起きてくることもあって,やってこなかった.とくに僕は,海外に行ったり,作品の制作現場の状況が変わるんで,そういうことをやりにくかった.プログラマに頼んで作品をつくっていると,海外に一人で行って,その作品の続きをやりたいと思ってもできない.だから,自分と作品との両方を連続的に高めていこうと考えると,やっぱり自分でやるしかない.
まぁ,いままでは一応できていますが,いまのこの業界ってどんどん変わっていくから,HotJavaやSGIを新しく覚えたりしなきゃいけなくて,けっこう大変ですけどね.
森脇:アーティストをやりながらいくらがんばってプログラムを勉強したところで,専門のプログラマにはかなわないっていうところはありますよね.
岩井:あるよね.だから,トータルな,最終的なものとして,やっぱりただのプログラマとはちがうものが打ち出せるということが大事なんじゃないかな.プログラマとしてみれば稚拙でも,トータルバランスで,一応,コラボレーションとしてやってる人とはちがうクォリティのものができるんじゃないかなという感じです.
昔映画をつくってるときに,自分で音楽もやりたくて始めた.その音楽って音楽単体として売れるようなものじゃないとは思うんだけど,でも,自分の映像と組み合わせることで,他の人には真似できないものになるっていう気がしていた.プログラミングもやっぱり同じなんじゃないかな.
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