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1996年2月 [終了しました.]
NTT/ICC推進室
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パソコンの発見 |
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岩井:そのうちパソコンをいじるようになってきたんですけど,パソコンはインタラクティブに一対一でプログラムを打ち込んで,それがすぐに返ってくるっていう機械ですよね.自分のなかには,コンピュータっていうものを触り始めたときのショックっていうのが大きくあるんだけど,今度は大型計算機からパソコンにいったときのショックがまた大きかった.パソコンというのは,同じコンピュータでも全然ちがう価値観のものだなっていう気がした.
今はちょっと違うと思うんですけど,そのころ大型計算機っていうのは,プログラムを書いて実行すると,しばらくしてダダダダダッと結果が出てくるというものだった.あるプロセスを走らせておいて待つっていう感じ.
だけど,パソコンって,BASICならBASICのプログラムを組んで実行すると,すぐにその結果が出るわけですね.ジョイスティックがつながってれば,それでちょっとした図形を動かしたりとかインタラクティブなものができる.それがすごく新鮮だったし,おもしろかった.
僕の場合,いろんな素材を使ってアニメーションをつくり始めたのと,コンピュータを使ってものをつくれそうだと思うようになったのが重なってた.それともう一つ僕にとってすごく重要だったことは,同時期に映画やアニメーションの歴史に興味を持って,図書館の本なんかでアニメーションの原点である,フリップブック——日本だと本の隅に絵を描いてパラパラやると絵が動くパラパラマンガ——とか,フェナキスティスコープやゾートロープといった,映画発明以前の視覚装置をいろいろ発見した.そしてそれに興味を持って自分でも本とか資料を参考にしてつくりはじめた.映画からそういうものに興味がだんだん移っていったときの感覚っていうのが,ちょうど大型計算機からパソコンに移っていった感覚にすごく近い.
映画というのは時間をかけてつくってそれを上映して見る.大型計算機も,プログラムを走らせて,時間がしばらくたってからその結果が出てくる.パソコンは,インタラクティブにすぐに結果が判明する.パラパラマンガだとかの映画発明以前の映像玩具も,絵を描いてすぐその場で動きを確認できますよね.パラパラマンガだと10枚ぐらい絵を描いてパラパラっと見て次はこうしようとか.その映像玩具のインタラクティブ性とパソコンのインタラクティブ性がすごく似ている感じがしたんです.
森脇:つくる過程でのインタラクティブ性ですよね.
岩井:そうね.ただ,見せるときもそれは言えるよね.映画はたしかにエキサイティングなメディアだと思うんだけど,それとまた別の価値観を,古い小さな映像装置が持っていた.それはいまだに僕の創作の根っこにあるっていう気がするんですよ.「映画にはないおもしろさってなんだったんだろう?」っていうのがいまだに持続している.
結局,映画としてただ上映されて動くのを見るだけじゃなくて,自分の手を使って動かすことに,より興味があったんですね.絵なりアニメーションなりを自分がコントロールするという感覚は,パソコンを使う場合も僕にとって一番重要な部分だなと思います.
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