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1996年2月 [終了しました.]
NTT/ICC推進室
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AMIGAの魅力 |
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森脇:予算がないから安いシステムというか,手に入りやすいものでとりあえずやって,でもそのシステムの延長上に,たとえばUNIXマシンに置き換えるとか,すごいシステム組んだりというのは……
岩井:それは全然発想になかった.全然ないっていうか,僕自身使ってないからリアリティがない.
森脇:岩井さんにはやっぱり安いパソコン使っててほしいな(笑).
岩井:別に値段は問題じゃないんだけど,とにかく自分の身近にあってよく知ってるかどうかっていう,そこが一番大きいところですね.
森脇:僕がすごく印象づいてる点って,そこなんですよね.
岩井:基本的に,パソコンってすごく表面的な部分でしか使われてなくてね,みんなアプリケーション使っていいとか悪いとか評価してるんだけど,それって,パソコンの能力の一部しか見てないというところがあると思うのね.MSXだってほんとうはこんなこともできるんだっていうことをいろいろやっていくうちに感じたし,AMIGAでも,使い方によってはシリコングラフィックスを使って番組つくるよりも豪華なものができるという感じがしました.最終的にできあがったものはテレビの上で評価されるわけですよね.展覧会の会場で,インタラクティブに作品を動かすのとちがって,1フレームに何時間もかけてレンダリングした絵も,リアルタイムにAMIGAで出した絵も,同じように評価されるわけですね.同じ土俵の上で勝負してるわけだから,その部分,別な魅力がないとダメです.
あとシリコングラフィックスでリアルタイムにCGキャラクターを動かそうとしたときに,結局は画質にこだわって不自然な動きになっちゃったりとか,ああいうのは僕は許せない.テレビでは実写のものは全部リアルタイムに動いてるんだから,いったんその世界にコンピュータが入ったら,絶対CGもなめらかに動かないと.その点AMIGAっていうのは,映像を動かすということについては秀でてますよね.もともと設計者がパソコン上でフライトシミュレーターをやりたいっていうことでつくった機械だから.
森脇:そうなんですか.
岩井:AMIGAの生みの親のジェイ・マイナーって亡くなっちゃったんですけど,彼の夢は,パーソナルコンピュータでボーイング社とかがやってるようなリアルなフライトシミュレーターをつくりたいということだったそうです.
森脇:フライトシミュレーターにはパソコンが能力を発揮するほとんどの要素が含まれてますね.
岩井:そう.リアルタイムに絵も音も全部コントロールできなきゃいけない.カスタムチップをいくつも設計して,そのなかに重力計算みたいなものまでアルゴリズムとして入れる設計をやっていた.スムーズに動かないフライトシミュレーターって楽しくない.そこがまず基本です.
Macは紙を模してデスクトップ上に表現するというコンセプトがまずあって,動きというのは二の次なんですよ.だから最初に出てきたマッキントッシュっていうのは512×384とかそういうハイレゾリューションのモノクロの絵だったわけですね.一方AMIGAは解像度は320×200だけど,色があって,とにかく絵がスムーズに動く.
森脇:いまでこそMacがマルチメディア対応とか言うけど……
岩井:いまだにそれに引きずられてると思う.DOS/Vのほうがまだ動きはクリアしているよね.Macはもともとのアーキテクチャが足枷になっている.
AMIGAは,そのリアルタイム性が僕の性に合っていたし,テレビ番組をつくる上でもすごく重要なポイントだった.ヴィデオ信号に準拠していて,専用モニタを使わずにどんなテレビにでも映るようにつくられてる.いまのパソコンってそういう部分はどんどんなくなってきてる.最近DOS/Vとかも買いましたけど,いまだになんかしっくりこない.
森脇:なんかクセが欲しいというか.
岩井:クセっていうか,今のMacやDOS/VはAMIGAに比べればCPUも格段に速いし,色数もたくさん出るし,レゾリューションもすごく上がってたりする.だけど,これだけハードが進化してるはずなのに,AMIGAでできてたことがそのままできはしない.だからDeluxePaintなんかを使ってみると,AMIGAのほうがずっと良かったりする.Mac上でウインドウズをエミュレーションしたりとか,AMIGA上でMacをエミュレーションしたりっていうのはやられてるけど,他のどのマシンでもAMIGAのエミュレーションはやられてないですよね.それだけやっぱりすごく個性的なパソコンだったと思うんです.僕はまだAMIGAを使ってますよ.
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