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イヴェント・レポート
「ICC アニュアル 2026 遺す/残る/受けとめる」アーティスト・トーク レポート
2026年11月 3日 17:20

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] では,6月20日(土)から11月8日(日)まで「ICC アニュアル 2026 遺す/残る/受けとめる」を開催しています.本展では,展覧会での作品鑑賞のほかにも,出品作家によるアーティスト・トークをはじめとした関連イヴェントや,ポッドキャストでの作家インタヴューを通して,作品の制作背景やこれまでの活動についてより深く知ることができます.今回は,本展関連イヴェントとして,これまでに開催したアーティスト・トークのレポートをお届けします.
会期初日の6月20日(土)には,ウー・チーユーさん,森永泰弘さん,翌21日(日)にはキム・ヨンウンさん,ローサ・メンクマンさんによるアーティスト・トークを開催しました.
ウー・チーユーさんは,出品作《セルロイドの物語》シリーズについて,その制作背景とともに紹介.AIで生成した画像を手がかりに,初期映画のフィルムに使われたセルロイドと,台湾における樟脳(しょうのう)産業の歴史をたどりながら,植民地支配や資源,労働をめぐる記憶が,現在のデジタル技術にもつながっていることを解説.普段は見えにくい技術や歴史の背景に目を向け,記憶を未来へ残すことについて語りました.
ウー・チーユーさん アーティスト・トーク 会場風景
森永泰弘さんは,映画の音響制作を出発点に,東南アジア各地で少数民族の音楽や生活音を録音してきた経験を紹介.ゴング(銅鑼)の音楽を通じて,地域ごとの文化や暮らしの違いを発見するとともに,異なる文化を記録することの意味や,自分自身の視点について考えてきたことを語りました.出品作《Auto-ethnography: HAMAKAI》の制作背景にも触れました.
森永泰弘さん アーティスト・トーク 会場風景
キム・ヨンウンさんは,音そのものや,それを聴く行為が文化や歴史,社会とどのように関わっているのかについて語りました.出品作《未来の聴取者へ》シリーズの解説では,朝鮮の伝統音楽の古い録音を加工・再演し,音を残すことと失われていくことについて話しました.さらに,記録されなかった移民女性の声をAIで生成する新作を通して,歴史のなかで残されなかった人々の声に耳を傾ける試みについても触れました.
キム・ヨンウンさん アーティスト・トーク 会場風景
ローサ・メンクマンさんは,パウル・クレーの絵画《新しい天使》を手がかりに,作品やイメージが歴史のなかでどのように意味を変えていくのかについて触れました.自身の「イメージ・リメインズ」についても解説し,過去を振り返るだけではなく,未来をどのように見つめることができるのかを,映像作品を通して語りました.
画像処理の分野で研究を続けてきたローサさんが,もっとも長く取り組んできた,グリッチ(イメージ・テクノロジーの処理過程で予期せず発生する破損のこと)を基調とした作品も,この日多く紹介しました.
ローサ・メンクマンさん アーティスト・トーク 会場風景
7月5日(日)には,無響室にて《「...ん!?」-虚響室-》を展示するSUGAI KENさんが登壇.照明を暗く落とした会場で,まずパフォーマンスを披露したあと,アーティスト・トークを行ないました.トークでは,「虚実」というテーマを軸に,自身の作品や制作活動,日頃から関心を寄せていることなどについて紹介しました.電子音で虫や鳥の声を再現する試みや,非楽音を含むさまざまな音を組み合わせて作品をつくる「ミュージック・コンクレート」,ものを別のものに見立てる表現などを通して,模倣と芸術の関係について語りました.AIによってさまざまなものが再現できる時代だからこそ,数値化できない不完全さや,人間らしい「バグ」を残すことの大切さについても話しました.
SUGAI KENさん アーティスト・トーク 会場風景
8月9日(日)には,新進アーティスト紹介コーナー「エマージェンシーズ!」にて「Just a Bit of Those Things:ほんの些細なものごと」を展示する宮下恵太さんが登壇しました.前半は,宮下さんによるライヴ・パフォーマンス,後半のアーティスト・トークでは,通信や電気をテーマにしたこれまでの作品・制作活動について紹介しました.
音や光,物を叩く動作などを使い,普段は目に見えないデジタル通信の仕組みを,だれもが体験できるかたちで表現する宮下さん.情報が送られ,相手に届くまでの過程をゆっくりと可視化することで,身近なテクノロジーの新たな一面を探る試みについて語りました.
トークのなかで宮下さんは,「0」(オフ)か「1」(オン)の二つの状態で信号を送り合うデジタル機械のことを,「デジタル特有のおおらかさがある」と表現していました.0か1かで判断する仕組みは,「明るいか暗いか以外はどうでもよい」ともいえる一方で,そこには一見「つめたさ」を感じさせるデジタルならではの「雑さ」や「寛容さ」がある.そうした見方からデジタルの仕組みをとらえ直す宮下さんの視点が印象的でした.
宮下恵太さん アーティスト・トーク&ライヴ・パフォーマンス 会場風景
9月21日(月・祝)には,比嘉了さんとの共作《Resistance Array》を展示するすずえり(鈴木英倫子)さんによるアーティスト・トークを開催しました.この日はゲストとして,清水知子さん(東京藝術大学教授)と遠藤麻衣さん(アーティスト,俳優,研究者)をお迎えしました.トークでは,すずえりさんが,出品作《Resistance Array》を軸に,電子音楽やインタラクティヴな作品制作から,通信技術を用いた表現へと展開してきた活動を紹介.2019年の香港やチリの民主化運動を背景に,SNSやレーザー光を介して抗議の方法や情報が世界に広がり,人々が連帯していく様子を解説しました.
すずえり(鈴木英倫子)さん アーティスト・トーク 会場風景
本展に関連して,全出品作家へのインタヴューをチャンネルICC ポッドキャストにて公開しています.インタヴューでは,作品制作の背景や,現在に至るまでの活動について,作家自身の言葉で聴くことができます.
インタヴューはYouTubeのICCチャンネルでも公開しています.展覧会とあわせて,ぜひお楽しみください.
チャンネルICC ポッドキャストページのスクリーンショット
「ICC アニュアル 2026 遺す/残る/受けとめる」は,11月8日(日)まで開催しています.会期も残りわずかとなりました.みなさまのご来場をお待ちしております.
【開催概要】
「ICC アニュアル 2026 遺す/残る/受けとめる」
会期:2026年6月20日(土)—11月8日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーB
開館時間:午前11時—午後6時(入館は閉館の30分前まで)
入場料:一般 800円(700円),大学生 600円(500円)
無響室作品体験:一般・大学生 200円
年間パスポート:2,000円
* ご入場は事前予約をされた方を優先させていただきます.
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*( )内は15名様以上の団体料金
* 障害者手帳をお持ちの方および付添1名,65歳以上の方と高校生以下の方,ぐるっとパスをお持ちの方は無料(受付にて身分証明書をご提示ください).
* 開館時間の変更および臨時休館の可能性がございます.
企画:吉﨑和彦,指吸保子,鹿島田知也,多田かおり
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC](NTT東日本株式会社)
[K.A]
