宮下は,情報ネットワークや電気,通信といった現代のインフラとしてのテクノロジーに焦点を当ててきました.遍在する事象の変化や差異を観察し,独自の解釈と解析によって特定の機能を持つシステムを構築する手法を用い,テクノロジーと人間の関係性について考察を続けています.
展示空間を満たすのは,光の明滅,リズミカルな音,そして低音のうなりです.デスクライトや電球,信号機が明滅し,缶や壁を叩く音,機械式スイッチの駆動音が響きます.低音のうなりは,東日本と西日本で異なる電力の周波数(50Hzと60Hz)の差から生じるものです.これらの背景にあるのは,私たちの日常を形づくるデジタル環境や,生活インフラとして供給される商用電源です.
デジタル環境において,あらゆる事象は「0」と「1」の信号へと符号化されます.人間が直接読み取れないこの信号の組み合わせを,宮下のシステムは再び知覚可能な事象へと変換し,そこから独自のメッセージを読み解く可能性を示します.また,交流電源を音に変える装置は,電気というインフラと,それにより成り立つ情報社会をとらえ直すきっかけを提示します.
本展示は,これまでの作品群を再構成し,日常の「ほんの些細なものごと」を通じて,私たちが現代の環境をどのようにとらえられるかという問いを投げかけます.