「イメージ・リメインズ」は,ヴァルター・ベンヤミンの遺稿「歴史の概念について(歴史哲学テーゼ)」に登場する「歴史の天使」を主人公とした,おもに映像で構成された作品シリーズです.天使は,後ろを向きながら,画像処理の一世紀にわたるアップグレードの連なりを横断していきます.その過程で,天使は制度による管理からすり抜け,無数のマルチモーダルなコピーとして遍在しながらも,なおシステムから完全に自由になることができません.そして天使は,未来の破滅を見る方法を学ぶために,自分の視覚がまったく機能しない洞窟へ入ります.
画像処理技術におけるプロトコルや規格は,画像を適切に流通させるための制度です.しかしその制定は合理的な判断によるものとは限らず,相反する諸条件を調停する過程で妥協が入らざるをえません.AIの飛躍的発展が続く現在では,制定の判断基準が人間ではなく機械にとっての有用性を優先する場合すらあります.メンクマンは,作品制作や研究を通じて,そうした技術の内部に隠された妥協を解明することを目指しています.
2025年,ベルリンのボーデ博物館で,歴史の天使の姿を説明するためにベンヤミンが言及したパウル・クレーの絵画《新しい天使》(1920)が展示されました.その際,天使にはある特別な文脈が込められました.赤紫色の壁と額装された写真で構成される《エンジェル・リメインズ》は,この経緯を参照し制作された作品です.壁の色や大きさは,ボーデ博物館での展示仕様にならったものです.