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1996年2月 [終了しました.]
NTT/ICC推進室
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衝撃のない90年代 |

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森脇:ちょうど僕が青春時代を過ごしたころっていうのは,パソコンが出てきたころと重なるんで,世のなかそれで変わっちゃったような気がするんですよ.パソコン以前以後というのは,世のなかの雰囲気が全然違う.
西田:企業で課長さんとか部長さんが窓を背に座って,そのまえに社員が,横になって並んでましたね.あれ,なくなってきましたよね.そういうぐあいに座ると,後ろから陽が入って,部長さん,パソコンの画面が見えないんですよね.で,横へずれる(笑).席の並び方もちょっと違います.しかも,別の階層化も出てきたりしている.
森脇:アナログレコードがCDに全て駆逐されちゃったように,なんかこう,パソコンによって,無血革命のような革命が起こってしまった.革命以後の新政権の元年だとか,そういうのがいまじゃないのかなと思うんですけどね.
西田:いまじゃ,なんか,パソコンを使わなきゃいけないような雰囲気がありますよね.私は触りたくもないんだけど(笑).
森脇:同時にですね,そのころいろんな新しいパソコンの概念が出てきたでしょう.OSっていう概念すら,ちょっとびっくりした.パソコンってのはソフトを打ち込まないとできないんだけど,そこを管理するOSっていう概念があって,その上に言語を載っけることができるんだみたいなことになって,お,これはすごいじゃないかって…….
そういうこととかね,例えばコンピュータゲームというのも以前はなかったわけですよね.これで遊べるっていうこともけっこう衝撃だった.
だけど,あのときいろんな考え方や概念にパソコンが与えた衝撃っていうのが,90年代に入って全然ないんですよ.ただスピードが上がった,メモリが安くなった,その辺はいろいろありますけど,ガーンっていうのはそんなにないんですよ.
西田:プログラムを書いて命令を与えてやると,人間はなかなか動いてくれないにもかかわらず,パソコンは動いてくれる.そういう楽しみってけっこうあったと思うんですよね.ウインドウズでプログラムを書きにくくなったというのも,趣味の人にはすごくつまらない.書くにはものすごい量の経験と知識が必要になるということが問題なんですけど,ビジュアル・ベーシックというのは,そうじゃない世界を見せてくれる世界なんで,私にはおもしろい.まぁ,おととし新バージョンが出て,確か,アメリカで99ドルですか.例えばヘンな話ですけど,ウインドウズ3.1のときにデータの時計ありましたね.5分間お話ししてるあいだに,誰でもあれを作れるんです.
森脇:砂時計みたいなのですか.
西田:いえ,デジタル時計ですね,数字が出てくる.「18:15」とか動いてるやつです.あれをCで書くとおそらく1週間ぐらいかかる.それが1分でできるツールが出てきました.デジタル時計を作るのに,コードを書くのは1行で,あとはマウスで作って,色も好きに選べるとか,そういうツールが出たりした.遊べる世界も少しは出てきた.絵を作って男性の顔が女性にピッと変わっていくなんていうのは,もうスーパーコンピュータぶん回さなきゃできなかったようなことがパソコンでできるようになった.視覚的な部分ではいろいろなことがあると思います.まぁ,そういうような,お仕着せでなく,自分が主体的になんかできるツールというのがもう少し多ければ…….
森脇:いまのコンピュータっていうのは,5,6年前に,「とにかく8色しかないんだけどフルカラーできれいに見せたいな」とかね,表をきちんと描けて,それが寸分狂いもなくプリンタに出てくるとか,アウトラインもジャギーがなく出てくるとか,そういうことをやりたいなと思ってた.いまそうしたことができるようになったんですけど,なんかできるようになったら飽き足らないというか,この先,なんかもうちょっと欲しい…….
西田:なんかお仕着せ的な感じがするからでしょうね.
森脇:できるようになったら,なんだこんなもんかっていう感じがする.5,6年前にもしできてたらすごく感激してたかもしれないんだけど,なんだか当たり前になったことで——当たり前になったのってすごいことかもしれないんですけどね,この先を考えるときに材料がないような気がするんですよ.
西田:ただ私などは時々,自分が歳をとってるから不愉快なので,いまの人はそうじゃないのかなという気がしてしまうんですけどね.
森脇:けっこう満足はしてるみたいですね.コンピュータ触ったこともないような女の子が面白い面白いって言いながら,絵を描いて音をつけて,「できました」って,通信で流してみる.それはすごく楽しいことだと思う.それをやろうと思ったって,5年前,6年前にはできなかった.どんなにひっくり返して苦労したってできなかった.それができるようになって,それはすごいことなんだろうけど.
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