ICC





はじめに
入場料
岩井俊雄氏インタビュー
西田雅昭氏インタビュー




1. かつての秋葉原,かつてのパソコン
2. ピーピング・ジャップ
3. JUGという組織
4. パソコミに踊らされるパソコン
5. パソコンのなかは「がらんどう」
6. 光るパソコン
7. 「見えるパソコン」
8. 8ビットマシンと32ビットマシンのちがい
9. マイクロソフトの野望
10. 衝撃のない90年代
11. ダウンサイジングということ
12. パソコンの将来
参加作家
イヴェント




ニュースクール'95パソコン倶楽部
公開講座
2月2日(金)
2月4日(日)
 
1996年2月 [終了しました.] NTT/ICC推進室





8ビットマシンと32ビットマシンのちがい


西田:私が一番最初にいじったIBM360って当時何億円ぐらいしたでしょうか,30年ぐらい前.メモリ48キロですよ.

森脇:あ,けっこう…….

西田:(笑)皆さんおっしゃるのは「何メガ」ですから.CP/M時代の8ビットのCPUって48キロですよ.「ワードスター」という一時期世界を制覇したマイクロプロのワープロも48キロで動いていました.いまの「ワードスター」とどのぐらい違うかというと,基本的にはそんなに違わないんじゃないかと思います.人間にわかりやすくアイコンをつくり,マウスで動かすというのが大変なことです.そういうユーザー・インターフェイスにすごく手間がかかる.もうひとつは,人間のミスをどのぐらい探し出すか,そいうことにすごくお金がかかっている.

森脇:要するに,過保護になればなるほど肥大化してくるっていう感じ.

西田:そうです.まぁ,いい言葉で言えば,人間に優しくなる.

森脇:例えば16ビットアドレスがね,システムだと,8メガまでがアドレスの限界ですよっていわれてた時代には,システムは1メガで,だいたいアプリケーション・ソフトもそれぐらい.ハードディスクとして何十メガかあればまぁ大丈夫だった.ところがその8メガの壁とか言われたものがいきなり32ビットアドレスになって,ほとんど無限に近く,テラまでいってしまうようなメモリを獲得した途端に,アプリケーションもどーんと増えて,ハードディスクも,1ギガじゃちょっと苦しいとかいう感じになる.これでラクになるなと思ったら途端におおもとのほうも肥大化する.だから,事情は全然変わってない.

西田:ただ,初めてコンピュータに触る方にとって非常にやさしくなってきている.要するに,「道具としてのコンピュータ」を考えるとすれば,コンピュータというものを勉強することが一番ナンセンスだと言えると思うんですね.例えば会社が,本来の仕事は「1時間いくら」で計算できるとしますね.でも,社員がコンピュータをやってる間は1銭も稼いでないわけですから,コンピュータを勉強するというのはおかしい.
 ビル・ゲイツというのは商売人としてはすごいと思いますが,ビル・ゲイツは,コンピュータの前で人間はものを考えるだけにしようじゃないかと言う.コンピュータの使い方ってのは,もうコンピュータに教えてもらう,コンピュータでわからなきゃいけない.
 ウインドウズ95について書いてある本とか雑誌の記事がみんな間違ってるんですが,ウインドウズ95では,「もう,あるアプリケーションを使うという意識を止めようよ」と言ってるわけです.例えば,文章を書くときは「マイクロソフト・ワード」を使うんだ,表を作るときは「エクセル」を使うんだという考え方をなしにしよう,と.
 「マイクロソフト・オフィス」では,もっとすごいことになっていて,「おまえ,なにがしたい?」と言われて,「報告書」と言うと,「どういう報告書?」って訊かれるんですね.で,テンプレートの例が出てくる.これをやるよと言うとそのアプリケーションが起動してくるわけです.自分が何を使うか意識しなくてもいい.
 正直なところ,ここまで過保護になると人間はどうするのかなと思いますけど,人間は内容をよく考えればいいという方向にどんどん進んでいる.間もなくカイロというOSが出たら,もっとすごくなりますが,何を使ってるかは全く意識しないでいい.自分が何をしたいかだけをコンピュータに言えばいいというふうになってきて,それは,初めての人にとってはやっぱり正しいことです.それをやるには,確かに膨大なリソースが必要になってくるのは,まぁ,しょうがないのかなぁ,と.