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evala《ebb tide》2024年 撮影:丸尾隆一
7月8日にICCのプレスリリースでもお知らせした通り,2024年12月から2025年3月まで開催した企画展「evala 現われる場 消滅する像」のために制作された,大型新作インスタレーション《ebb tide》とこれまでの活動が評価され,アルス・エレクトロニカ賞 2025において,evalaさんが日本人として初の冨田勲特別賞を受賞されました.
アルス・エレクトロニカ賞(Prix Ars Electronica)とは,世界で最も伝統と権威のあるメディア・アートのコンペティションです.
「Isao Tomita Special Prize(冨田勲特別賞)」は,シンセサイザー音楽の開拓者であり,生涯に渡りサラウンド(立体音響)への飽くなき探求を続けた20世紀を代表する作曲家の冨田勲氏とそのクリエイティヴ・スピリットを記念して,TOMITA information Hubとアルス・エレクトロニカが共同で授与する賞であり,アルス・エレクトロニカ賞 デジタル・ミュージック&サウンドアート部門のゴールデン・ニカ賞と並行して選出され,デジタル音楽とサウンド・アートにおいて,芸術的,技術的な挑戦を続け,革新的でユニークな音楽で人々に刺激を与えるアーティストと作品に贈られるものです.授賞式は,2025年9月3日よりリンツで開催される「アルス・エレクトロニカ・フェスティヴァル 2025」にて行なわれる予定です.
日本時間の7月7日に行なわれた受賞の発表はアルス・エレクトロニカのYouTubeチャンネルでライヴ配信され,アーカイヴも公開されています.
冨田勲特別賞受賞者は,38:10よりアルス・エレクトロニカ・フェスティヴァル芸術監督 ゲルフリート・シュトッカー氏より贈賞理由とともに発表されました.この場面ではシュトッカー氏よりICCがどのような施設であるのかについても触れられています.
シュトッカー氏が『OS10 アートとメディア・テクノロジーの展望——ICC オープン・スペース10年の記録 2006–2015』に寄せてくださったテキスト『メッセージ』からも長年にわたりICCの活動をご覧くださっている様子を垣間見ることができます.
受賞作品《ebb tide》は,evalaさんがこの作品の音と向き合った2ヶ月以上のICC滞在制作から生まれた複数の作品の中でも最も大規模な作品です.2024年9月に展示室の設営準備が開始され,ICCギャラリーAの天井は黒く塗装され,壁面を外部の音を遮るよう布で覆ったり,NOIZ設計による岩礁のような形状の構造物の制作と並行し,厳密な位置調整の上でさまざまなタイプのスピーカーが配置され,展示状態と同じ空間でevalaさんの作曲作業が行なわれていきました.
吸音材で造られた構造物に登って音を聴くという体験をするこの作品を紹介する映像(01:11)は,「冨田勲特別賞」受賞者紹介のページでも公開されています.
https://calls.ars.electronica.art/2025/prix/winners/19303/
また,映像アーカイヴHIVEでは,「evala 現われる場 消滅する像」会期中に行なったアーティスト・トークの記録映像を公開しています.vol.4では,《ebb tide》のクリエイションの中でevalaさんが音具の録音に用いたマイク「BAROm1」を制作した宇都宮泰さんが登壇され,冒頭ではミニ・ライヴも行なっています.
また,《ebb tide》の構造物を設計され,これまでにも多数のプロジェクトでevalaさんとお仕事をされてきた,NOIZ 豊田啓介さん,平井雅史さんも登壇して開催したvol. 5では,《ebb tide》の構想段階から展示室での制作過程についても,貴重な資料写真なども含めて紹介されています.ぜひご覧ください.
写真左:アーティスト・トーク vol. 4の様子 壇上右より,宇都宮泰,evala,畠中実
写真右:アーティスト・トーク vol. 5の様子 壇上右より,平井雅史(NOIZ),豊田啓介(NOIZ),evala,畠中実
新たな聴覚体験を創出するプロジェクト「See by Your Ears」を国内外で2017年より展開し,まだ誰も見たことも聴いたこともない新作を創作するとおっしゃっていたevalaさんが多くの工程を緻密に積み上げ,実験し,微細な調整を繰り返し行ない,さまざまな役割や専門性をもつスタッフとともに諦めることなく,完成形がより良いものになるよう向き合い続けていたこのクリエイションに伴走できる時間は,ICCのキュレーターやテクニカルスタッフ,キュレトリアル・チームにとっても責任を感じると同時にこの仕事のやりがいを実感する何ものにも代え難い経験でもありました.
会期中に行なわれたさまざまな媒体のインタヴューでも折りに触れ,evalaさんが発言をされていましたが,企画を担当した畠中実氏との対談でも,「サウンド・アート——音というメディア」(2000年度企画展)の会場に同世代の,2025年時点で各方面で活躍されているアーティストたちと訪れたことがその後の活動の大きな契機となったことを改めてお二人が触れているのも印象深い場面でした.この機会にぜひご覧いただきたい対談です.
アーティスト・トーク vol. 4
出演:evala,宇都宮泰,畠中実(ICC)
開催日:2025年3月1日
/ja/hive/artist-talk/20250301/
アーティスト・トーク vol. 5
出演:evala,豊田啓介(NOIZ),平井雅史(NOIZ),畠中実(ICC)
開催日:2025年3月2日
/ja/hive/artist-talk/20250302/
映像「展覧会ドキュメント evala×畠中実 対談」より
「evala 現われる場 消滅する像」展覧会ドキュメント
evala×畠中実 対談
/ja/hive/special-contents/evala-emerging-site-disappearing-sight-exhibition-document/
ICC開館時や2000年前後のICCのイヴェントや展覧会を訪れたことがきっかけとなって研究者やアーティストとして少なくない人数の人材が活躍していることは,1997年に開館してからこれまでの時間と人的交流の蓄積が開館当初に掲げられていた理念が結実した一つの形なのではないか,と畠中氏も対談の中で語っています.
企画展会期が終了してからICCウェブサイトでも公開している「evala×ICC×サウンド・アート年表」では,evalaさん個人の活動とICCが同時期にどのような活動を行なっていたか,またサウンド・アートの分野や技術分野ではどのような事柄があったのかを知ることもできます.
「evala × ICC × サウンド・アート年表」展示風景 撮
このたびの「冨田勲特別賞」受賞を記念し,8月8日より9月15日まで,evalaさんがICC無響室のために制作した《大きな耳をもったキツネ》《Our Muse》を再展示します.お一人ずつでの体験のため,1日に体験していただける人数は限られますが,ご来場希望日の7日前11:00よりオンライン事前予約の受付を開始していますので,ご鑑賞希望の方はご予約の上でご来場ください.
「See by Your Ears」
https://seebyyourears.jp/news/isao-tomita-special-prize/
Prix Ars Electronica “Isao Tomita Special Prize”
https://ars.electronica.art/prix/en/isaotomita/
「冨田勲特別賞」受賞記念 無響室展示 evala 《大きな耳をもったキツネ》《Our Muse》
展示期間:2025年8月8日(金)—9月15日(月・祝)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] 無響室
開館時間:午前11時—午後6時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:8月12日(火),18日(月),25日(月),9月1日(月),8日(月)
入場料:一般・学生 500円
上映プログラム「evala 現われる場 消滅する像」展覧会ドキュメント evala×畠中実 対談《Our Muse》
上映期間:2025年8月8日(金)―9月15日(月・祝)
*上映時刻につきましては,シアター・スケジュールのページでご確認ください.
会場:ICC 4階 シアター
休館日:8月12日(火),18日(月),25日(月),9月1日(月),8日(月)
上映時間:約27分
定員:29名(当日先着順,うち車椅子席2)
入場無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
入退場自由
*本イヴェントで上映する映像は,HIVEでも視聴が可能です.
[A.E]