ICCインタヴュー・シリーズ
アート&サイエンスの現在
1997年から99年にかけて撮影された,21世紀に向けて新しい試みを行なうアーティスト,科学者,批評家,建築家,映画監督,写真家,などのインタヴュー集です.
インタヴューに登場する人々は,それぞれの分野において脱領域的な活動を行ない,従来の思考や表現のフレームにおさまらない活動や理論を展開しています.
20世紀とはどんな世紀であったのか,21世紀はどんな世紀になるのか,といった問題が多様な角度から語られています.
インタヴュー・シリーズは,ICC館内のHIVEコーナーでご鑑賞いただけます.
一部のインタヴューは,HIVEのウェブサイトからも閲覧が可能です.
第1期 1996–97
- 館内でのみ閲覧可能
Laurie ANDERSON ローリー・アンダーソン
プロフィールヴァイオリンは手の中で呼吸をしているのが感じられて好き---ものを作る人々が自分たちの言葉で話し合う特別な場所---私のCD-ROMは魔法の箱であって物語ではない---アーティストの用いるイメージの多くは耳や眼や鼻で感じたものや触覚からきている---最初の真実の恋は話し言葉に対するものだった ARAKAWA Shusaku 荒川修作
プロフィール日本人の持つ直感の中にすばらしい論理体系がある---この民族には「建築革命」しかない---「建築的身体」の構築からまったく新しい論理が誕生してくる---真の自由や希望の意味---私は未来に希望を託すのではなく私自身に希望を託している!---他人事のように笑っている連中は地球に住む権利がないんだよRoy ASCOTT ロイ・アスコット
プロフィールサイバネティックスという科学の存在---鑑賞者はアーティストと同程度にアート作品の作者である---私は全地球的なおとぎ話を生み出そうと試みた---テクノロジーは欲望から生み出される---アーティストは創始者というよりも管理者に近い---アート教育は危険で,刺激的で挑戦的でなければならないStephen BECK ステファン・ベック
プロフィールわずかながら存在する純粋な光を扱う芸術形態にひかれた---ネガティヴで破壊的な側面に対抗するかたちでテクノロジーを使いたかった---次世紀には,探査研究のきわめてエキサイティングな未開地が人の脳であることが判明するでしょう---20世紀は電子の世紀,21世紀は光子の世紀---大脳中心主義から感覚中心主義へ- 館内でのみ閲覧可能
Pierre BOULEZ ピエール・ブーレーズ
プロフィール演奏における新しい利方の誕生---テクノロジーと演奏者との出会いの豊かさ---テクノロジーは作品に欠かせないものでない---音楽家と技術者を対話の場に参加させること---人は「出来事(イヴェント)」に惹かれていく---直接的体験とテクノロジーの相乗効果が文化の水準を押し上げてゆく - 館内でのみ閲覧可能
DILLER & SCOFIDIO ディラー&スコフィディオ
プロフィール現実と仮想のあいだの戯れ---面白いことにMoMAはモダン・アートの美術館であってコンテンポラリー・アートの美術館ではない---美術館の壁を問題視する---今日,何がローテクで何がハイテクか?---私たちがテクノロジーであるとはとても考えないような驚くべきテクノロジーが存在しているのです Scott FISHER スコット・フィッシャー
プロフィール初めての「仮想環境」の創出---私たちが何よりも望んでいたのは日常生活では出会えない奇想天外で超現実的な環境をつくることだった---現実世界では体験できないようなヴァーチャル環境をデザインしたい---リアルとヴァーチャルがどちらがどちらだかわからないようになると思うとわくわくするJoan FONTCUBERTA ジョアン・フォンクベルタ
プロフィール写真とテクノロジーは真実に奉仕する?---現実も真実ももはや存在しない,ただ視点や解釈だけが存在する---傲慢な科学にはパロディや冗談やユーモアを持ち込む余地がある---新しいテクノロジーが芸術の概念を変える---私に言わせれば,宇宙の写真は写真美学上の独立した分野をつくっているWilliam FORSYTHE ウィリアム・フォーサイス
プロフィールもはやバレエ作品は観客に固着したものではない---身体をダンスで情報化する---われわれは作品を作るとき主題ではなく情報の手段について語り合う---デジタル・メディアは人々に創造的になるパワーを与えている---"I"や"me"は重要性を失いつつある---われわれは,クリエティヴではなくコミュニカティヴになろうとしているFUJIHATA Masaki 藤幡正樹
プロフィールコンピュータは作るプロセスの中でしかリアリティがない---リアリティのありかをどう揺さぶるか---ぼくたちはもっと目的を持ったクリエイションをしなくちゃいけない---自分の持っているものを素直に他者に伝えるための道具---身体の中に眠っている記憶を新しいメディアを使ってどうやって取り出すか- 館内でのみ閲覧可能
William GIBSON ウィリアム・ギブスン
プロフィールパソコン黎明期がSF作家としての僕の活動に影響を及ぼしたのは間違いない---未来は僕が予測したものとは大きく異なった相当に異質なものになるだろう---アフリカ人がコンピューターをつくったら?---ファンタスティックな現在---マシンがわれわれになるのではなくわれわれがマシンの一部になる Peter GREENAWAY ピーター・グリーナウェイ
プロフィール私たちはまだいかなる映画も観てはいない---フレームの破壊と連続性の切断---物語を語るには映画は貧弱なメディア---生命はまったく無目的である---われわれはみな,遺伝子素材を運ぶスーツケースである---映画は将来,肉体的な感覚をきちんと含み込むものとなるだろうStanislav GROF スタニスラフ・グロフ
プロフィール新しい展望は歴史的展望のうちには書き込まれていない---テクノロジーにおける時代の変化はすでに起こっている---システムは見通しでもユートピアでも理想でもなく可逆的とは思いにくいひとつの展開を上手に作っている---コントロールされた幻想大国の終焉---人々はあらゆるものをミュージアム化しようとしている- 館内でのみ閲覧可能
Gary HILL ゲイリー・ヒル
プロフィール空間や時間の中で自分の体と毎日向き合う---テクストを読んでいる自分が同時に読まれている---もう一度物事を触覚的に感じたい---ビデオは最初の「非=メディア」だ--「アート」ではない領域で体験できるアートの世界---テクノロジーが可能にすることの大半は速度に関わる---人は時間を生きることをますますしなくなる ISOZAKI Arata 磯崎新
プロフィール人間が入らなきゃいいんです.人間が入ってさえいなければ建築の型は変えることができる---テクノロジーやメディアの変化が,建築に与える影響は限界がある---情報メディアが建築をどう変え得るかではなく,制度や機関や組織をどう変えるか---大都市のなかで,古い考え方でつくられた建築がメルトダウンする- 館内でのみ閲覧可能
IWAI Toshio 岩井俊雄
プロフィールマニュアルにはない新しい使い方をしていくことこそが,アーティストたりうる条件---手で試行錯誤を繰り返しながらアイディアの基本を掴む---パラパラ漫画から始まったパーソナルなメディアの面白み---他のメディアでは絶対に成立しない新しい要素をしてもらいたい---肉体性を基本とするゆえの原動力 Jaron LANIER ジャロン・ラニアー
プロフィールVRの成長に決定的な貢献を行った人々の多くは,楽器をつくろうとしていた人たちだった---ヴァーチャル楽器には神秘性が少ない---このインターネットという実験をせめてあと数年,続けてみたらと言いたい---人間は究極的にはコンピューターと違うのか違わないのか?---ダークサイドをあるがままに受け止める- 館内でのみ閲覧可能
Daniel LIBESKIND ダニエル・リベスキンド
プロフィール人間がもつれ合い交差してできる線は音楽の土台となる線と似ている---現在のテクノロジーが無意識の扉を開けることになった---真に優れた建築はシステムを完全に破壊することができる---私たちは確実にある時代に入ろうとしている--欲望と解釈のあらゆるフォルムが消滅したとき初めて初めて建築よ芸術の真の作用が機能し始める Geert LOVINK ヘアート・ロフィンク
プロフィールメディアはもはや現実を喧伝するためのものではない---新しいメディアは私たちがまず確定し次を求めて闘うべき---われわれ自身の言語をつくる---「ネット・クリシティズムは政治的,経済的問題に矛先を向けるべき---リカードやマルクス,シュムぺーターに立ち戻るべき- 館内でのみ閲覧可能
Marvin MINSKY マーヴィン・ミンスキー
プロフィール科学と芸術,心の内部と外部,それぞれの世界を結びつける「コンピューターサイエンスと人工知能」---ようやく私たちは複雑な知識と知識のプロセスを表現する有益な理論を展開しはじめた---心とは,脳が為すところのものにすぎない!---複数の方法で事物を表現することは,心理学や哲学におけるたくさんの「謎」への答えになりうる - 館内でのみ閲覧可能
Jean NOUVEL ジャン・ヌーヴェル
プロフィール建築の未来は建築の内部にはない---建築は今日,映画のようにつくられる---形態と空間というパラメーターは失速状態に陥りつつあり物質と光に向かっている---最も重要なのはその時代を生き,われわれが持っている方法を最大限利用すること---処方箋ではなく診断が必要 Ilya PRIGOGINE イリヤ・プリゴジン
プロフィール自然---時間---西欧的な世界観のすべてが二分法に苦しめられてきた---進化---世界はゆらぎで充たされている---科学者は汚染された街に留まり,汚染を減ずる手助けをしなければならない---科学は現実世界を変革する---血塗られ,暴力が吹き荒れたからこそ歴史は,われわれの大いなる希望ではないか- 館内でのみ閲覧可能
Philippe QUEAU フィリップ・ケオ
プロフィール私たちは現在,500年か1000年に一度の表現方法の歴史における断絶期にいる---21世紀を形づくっていく「サイバー」文化---デジタル技術は第三の革命---人工生命によって「作品=観客」という新たな複合体をつくれる---デジタル・テクノロジーを利用して「世界の記憶」のネットワークを作りたい Thomas SHANNON トーマス・シャノン
プロフィール目には見えないけれど触覚の領域に存在するコミュニケーション---長年にわたり,物体を浮遊させる環境について考えてきた---何らかのかたちで気持ちのよい,望ましい現実に関する作品をつくろうと努めてりいる---新しい技術の開発によって,私たち自身が拡張しつづけているのだJeffrey SHAW ジェフリー・ショー
プロフィールイメージがあちら側にあり観る者はこちら側にいる受動的なアートの消費関係を破壊する---インターフェイスは作品の必須の構成要素---あらゆるアートはインタラクティヴ---伝統的なアート形態における「フレーム」---コンピューターの時代にはアーティストが楽観的になるリソースがある- 館内でのみ閲覧可能
Bill VIOLA ビル・ヴィオラ
プロフィールカメラの存在を忘れるところまでいけた---ニール・アームストロングが月に足跡を残したとき,17歳の私は涙が止まらなかった---アートは「影響」にほかならない---いまや私たちはイメージ記号が存在しない危険な状況にいる---テクノロジーが消滅したときこそアートが生まれる - 館内でのみ閲覧可能
Paul VIRILIO ポール・ヴィリリオ
プロフィール世界時間の成立は歴史そのものを危機に陥れてしまうような出来事---支配的な時間に存する「サイバーワールド」---「スピードは世界の老化である」---人間は世界を無にしてしまうような絶対速度を発明してしまった---世界は二重の都市化に向かっている---21世紀には怪物の性質が変わる Peter WEIBEL ペーター・ヴァイベル
プロフィール原因があって媒介なしに別の場所で結果が生じるテクノロジー空間---この民族には「建築革命」しかない---グローバリゼーションは新しい管理形態であり,ひとつの中心から発せられる権力だ---身体的な対面から自由になったコミュニケーション---ポップ・ミュージックのようにリミックスとしてのハイブリット化を受け入れるSlavoj ŽIŽEK スラヴォイ・ジジェク
プロフィール21世紀に「ヴァーチャル革命」は起こらない---「泣き女」と「缶詰の笑い」---ヴァーチャル化という現象はつねに存在していた---人は命令されたがっている---真の神秘はすべてを見せてしまえば失われるもの---人々は世界観や現実に対する態度も異なるふたつの階層に分かれている
第2期 1997–99
- 館内でのみ閲覧可能
Jean BAUDRILLARD ジャン・ボードリヤール
プロフィール新しい展望は歴史的展望のうちには書き込まれていない---テクノロジーにおける時代の変化はすでに起こっている---システムは見通しでもユートピアでも理想でもなく可逆的とは思いにくいひとつの展開を上手に作っている---コントロールされた幻想大国の終焉---人々はあらゆるものをミュージアム化しようとしている Ingo GUNTHER インゴ・ギュンター
プロフィールテクノロジーを使わなければ最小限の副産物しか得ることが出来ないだろう---テクノロジーに向かうアーティストのプロセスはパブリックに開かれつつあり,単なるすばらしいアート作品で終わらない---本質的な意味で,われわれは世界を理解するべき---インターネットは人々を結びつけると同時に分離させていく- 館内でのみ閲覧可能
HOSOKAWA Toshio 細川俊夫
プロフィール初めてのオペラの作曲---「リアの物語」で作りたかったのは自然の叫び---僕は作曲するうえで心に深く入る音楽を求めている---人間の根元的な力を音で表現することによって「癒し」的なものを体験できるのではないか---感性を広げていく音の体験---故郷(日本)への悼み---とことん原始人になってやろうと思う ITO Toyo 伊東豊雄
プロフィール僕の建築は社会に対して閉ざしていくところから始まった---情報も含めたバーチャル的なもうひとつの空間によって都市が覆われている---コンビニに並ぶパッケージが物と身体に対する人間の感覚を決定的に変えた---環境を体験できる装置=建築---建築を通じて都市空間における自分の身の処し方を考えているDerrick de KERCKHOVE デリック・ド・ケルクホヴ
プロフィールデジタル・ネットワーク社会における技術的発展と制作者的環境の探求---多様化するクリエイティヴィティ---他者との接続の仕方を認めることによって「知」の働きは高まり,問題解決への道も開ける---「コネクティッド・インテリジェンス」は身体の作用から生まれたリアリティ---現代,身体こそが唯一のローカルである---マクルーハンへの驚嘆- 館内でのみ閲覧可能
Friedrich KITTLER フリードリッヒ・キットラー
プロフィールデジタルシュミレーションと生命や自然とは実質的な競争関係に入っている---権力は国家から離れグローバル・プレーヤーのもとへと移行しつつある---コンピュータが持つプログラム可能性を維持することが大切なのだ---Xプラス1世代のコンピュータを思いつくのはX世代のコンピュータだけ.これは以前のわれわれの道具や機械が,独自の生命を持つためのステップ MURAKAMI Yoichiro 村上陽一郎
プロフィールTWO CULTURES(文科系文化と理科系文化)---歴史的に見れば「科学」と「技術」は完全に分けるべきだ---専門家は社会全体のなかで総合的に判断していくようなしくみや意識のあり方が21世紀には必然になっていくだろう---科学は「この世界の秩序の美しさ」という神秘的で美学的な感覚と結びついていた---人間の感性的な側面をどうやって科学的に分析できるか- 館内でのみ閲覧可能
Nam June PAIK ナムジュン・パイク
プロフィールテレビのヴァイオレンスによって実際の血が少なくなったと考えることも不可能ではない---30歳近くになって見渡したら,電子は音楽には大きい影響を与えたけれど,ヴィジュアルなものにはほとんど影響を与えていないことに気づいた---甘い宗教性は21世紀は重要になるのではないか---これからは触覚に感じるインターネットが出てくるのではないか - 館内でのみ閲覧可能
TADA Tomio 多田富雄
プロフィール生物のなかに美の原型が見つかる---身体性が作り出す価値---現代の生物学上で最も大きな課題は「細胞がどのように死んでいくか」---自分で自分を作り上げる免疫システム---免疫学は,最初に問いかけた「自己とは何か」「非自己とは何か」という基本的なところに必ず帰ってくるはず---生物の複雑な情報処理の仕方が現実社会の情報処理に反映されるときがくる - 館内でのみ閲覧可能
Woody VASULKA ウッディ・ヴァスルカ
プロフィール「新しい認識空間」を求める---アート・ムーヴメント---コンピュータから作品になるポエティックな部分を抽出する---われわれはコンピュータを束縛から解き放し始めている---私の理想とする観客---新しいアートの表現は,私たち自身がコンピュータという新しいメディアを用い定義し法則を探し,ナラティヴの方向性を示すことから生まれる - 館内でのみ閲覧可能
Jeff WALL ジェフ・ウォール
プロフィール生活は演劇的なものと現実的なものの融合であり,私はそれを写し出そうとしている---われわれ芸術家の言語は長い年月をかけて何千もの作品を経験することから成り立っている---芸術を作ることはある意味で技術と道具から決定づけられている---優れた芸術家はあらゆる気分を利用してさまざまな気分で制作するものだ---芸術をよい芸術として経験すること YAMAGUCHI Katsuhiro 山口勝弘
プロフィールヨーロッパの伝統的な芸術形式を追い掛けていては間に合わない---今,両生類的な生き方がさらに複雑化してどうしようもなくなっている---連続しないことによって生まれる開放感が僕の刺激の要素となっている---テクノロジーは政治的,軍事的技術に不可分の関係で発展する---本やテクストをもう一度考え直したいYOHRO Takeshi 養老孟司
プロフィールコミュニケーションよりも表現にこだわる---脳は開かれたシステム---これから新しく生まれてくる自分はどうなるかわからない,「知」とはそういうものだ---意識は脳の内的必然性によって生まれた---現在の段階では脳は演算装置だと考えるのが一番いい---神経系が出来た最も大きな理由は遺伝子だと何世代もかかるものを一世代でやってしまえることを発見したこと