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展示作品 |

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《寄生,影響,変型2/寄生的,電気的交感
IV》
"Parasites,Influences
and Transformations 2 / Parasitic Electronic Seance IV"
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カール・ミカエル・フォン・ハウスウォルフ&ピーター・ハグダル
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音の「霊性」をさらにミステリアスに提示するカール・ミカエル・フォン・ハウスウォルフとピーター・ハグダルによる作品は,そのタイトル《寄生,影響,変型2/寄生的,電気的交感IV》が示唆するように,電線や電気機器,インターネット,光や観客の気配などを通じて亡霊を呼び出す降霊会だと考えられている.なるほど,作品において音響や映像が変型されたり,メッセージが投影されるのは,電気や音の亡霊の仕業であると言うことなのだろうか.
ハウスウォルフはこれまで,観客に物理的刺激や音による心理的動揺を与え,その反応を観察するような,ユーモラスな悪意をもつプロジェクトを行なってきた.例えば1997年のドクメンタXにおける作品では,庭園を見下ろす建物に設置された電源から,実際に電流を流した電線によって柵をその庭に張りめぐらし,それに触れた鑑賞者はその刺激に反応し,手を急に離したり,のけぞったりする.そしてそこには電流を変換した,どこか銃声めいた音が定期的に流されていて,庭園にいる人々はまるで銃で撃たれたかのような身ぶりをくり返す.電源の設置された建物の窓からは,その庭園を一望することこともでき,第三者はそれを観劇でもするかのように目の当たりにする.彼は同じくスウェーデンのサウンド・アーティスト,リーフ・エルグレンとともに仮想国家「エルガランド—ヴァーガランド」を設立したり,また空間中の可聴域外に存在するという死者の声や地球外生命体の声を採集するというプロジェクトも行なっている.しかし,これらの活動を冗談だと言ってすませることもできないだろう.実際,音響が人間の精神におよぼす影響には,未知な部分が多くある.だからこそこの作品に,すなわち降霊会の場に足を踏み入れ,その気配から展示作品の音や映像が変形したとして,実際にわれわれが知覚することができる領域外で起こっているかもしれない出来事を感知することができない以上,それが亡霊による仕業でないとは,誰が言い切れるだろうか.
(畠中 実 / ICC学芸員)
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