メディア・アート作品において「音」は,すでに作品を構成する一つの要素として,必要不可欠な存在になっています.マルチメディアという言葉からも連想できるように,メディア・アート作品は,視覚はもとより聴覚,さらには触覚などから多元的に鑑賞者の感覚に訴えかけるものですが,ときに聴覚という,そもそも受容的な感覚を,重要な要素としている作品群が際だつようになりました.
この展覧会では,センサーや映像を用いながらも,よりさらに意識的に,「音」に重点を置いた表現活動を行う作家に焦点をあてています.それらの作品は,環境音や電子音,声,自作楽器,はては電子機器自体の発するノイズや物理現象に伴う極微細なノイズなどを用いて,わたしたちを取り巻く事象を未知の聴覚体験として知覚させる装置であるともいえるでしょう.
本展はそうした,いわば「音」というメディアを駆使する9人と2組の作家たちによる作品を,通常の展示空間だけではなく無響室や展示室外の空間を利用して展示し,「音」にまつわるさまざまな局面を提示する試みです.
NTTインターコミュニケーション・センター館長
兼子隆
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