ICC
《センシティヴ・モメンツ》
2000-08年
ジャン=ルイ・ボワシエ
《センシティヴ・モメンツ》
撮影:木奥惠三

学習机に投影された映像の上で本のページをめくるように手を動かすと,それに伴って映像が左右に移動し,同時に窓越しにあらわれるテキストがスクロールされます.場面転換は,「私」「とき」「場所」といった文中のキーワードによってリンクされ,見ること,聞くこと,読むこと,そして眺めることから,ルソーの文学世界へ直観的にアクセスできる,新しい書物の可能性を提示しています.

《センシティヴ・モメンツ》は,フランスの思想家ジャン=ジャック・ルソー(1712-78)の著作から引用されたテキストを,映像とともに自由にブラウズしていく作品です.ボワシエは,ルソー文学における「回想的に散文で再構成した物語」に注目し,鑑賞者が私的に体験するインタラクティヴ作品を構想しました.映像は,ボワシエ自身がルソーの訪れた場所と,その足跡をたどって撮影したもので,言葉を超えた感覚的なイメージをルソーのテキストと共鳴させています.鑑賞者は,それらのテキストとイメージを紡いでいくことで,ルソーの思索をめぐる旅へいざなわれ,ルソーのテキストが生まれた情景を追体験することになるでしょう.

ジャン=ルイ・ボワシエ プロフィール

ジャン=ルイ・ボワシエは,数学と物理を学んだ後,グラフィック・デザイン,写真,実験映像,インスタレーションなどを制作し,80年代初頭よりインタラクティヴ・アートの制作を開始した.1990年以降,ルソーをテーマにした作品の他,形と道具としてのインタラクティヴ,インタラクティヴな物語などをテーマに共同研究を展開.パリ第8大学教授(美学).同大学インタラクティヴ美学研究所,および国立装飾美術学校のインタラクティヴ研究所アトリエのディレクターを務める.

過去に参加した展示・イヴェント
キーワード:ナラティヴ

テキスト,映像,音声などがデジタルで扱えるようになり,直線的なシークエンスにとらわれないノンリニアな編集やアクセスができるようになりました. そのことは,始まりと終わりのあるリニアなメディアの制約から解放された表現の可能性を開きました. コンピュータ・プログラムや鑑賞者の介在によって,ノンリニアに展開する新しいナラティヴ(物語)を組み立てていく手法,およびそれを模索することは,インタラクティヴ・アート表現の特徴のひとつです. 関連イヴェント アーティスト・トーク
日時:2008年4月19日(土)午後2時より[終了しました.]|→ 詳細|