ICC
《計算の庭》
2007年
佐藤雅彦+桐山孝司
《計算の庭》は2008年4月19日から8月31日まで展示されました.
《計算の庭》
撮影:木奥惠三

数字が記されたRFIDタグ内蔵のカードを選んで身につけて庭の中に入ります.計算式が記されたゲートを通過するごとに自動的に行なわれる演算によって,選んだ数字が「73」になればこの庭から出ることができます.《計算の庭》は「計算」という抽象的な概念を,参加者が数字に置き換わって「計算されること」をイメージしながら,身体を使って計算するための装置といえます.

ゴールの「73」にたどりつく経路を最初に見通すことは難しいでしょう.最短では,4回の演算でゴールできる数字を選んだとしても,多くの場合,試行錯誤を繰り返して5回以上ゲートを通過するという分析結果が得られています.最短経路の一部が描かれた「状態遷移図」は,最適なシステム構築をする際などに,システム全体の挙動を俯瞰するためのツールとして使われているものです.しかし,《計算の庭》での計算行為は最短な演算が必ずしも最適とは考える必要はありません.ゴールの「73」という数字そのものはひとつしかありませんが,参加者それぞれが迷い,考えながら過ごした時間,計算式,ゲートをくぐった経路をプリントアウトしたマップもすべて,「73」にたどりつくための思考のプロセスであると同時に,「73」がさまざまな形で置き換えられたものと考えることができます.

助成:財団法人中山隼雄科学技術文化財団
制作協力:大日本印刷株式会社,タカヤ株式会社,有限会社トータルインテリア スガハラ
制作スタッフ:石川将也(グラフィック・デザイン),安本匡佑(ソフトウェア開発),藤田至一(デバイス開発)
佐藤雅彦+桐山孝司 プロフィール

佐藤雅彦と桐山孝司は,東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻が開設された2006年より,ユークリッド(Euclid)を結成し,従来の表現手法にとらわれない科学技術を内在した表現活動を行なっている.佐藤は,独自の方法や考え方で,メディアを問わない表現活動を行ない,脳科学の実験デザインや新しい表現方法の新領域研究から注目を集めている.桐山は,設計の知能化の研究を出発点として,現在は映像メディア学の確立に取り組んでいる.

過去に参加した展示・イヴェント(佐藤雅彦)
キーワード:プロセス

コンピュータを動作させるためのプログラム言語は,実行手続きが順番に整理整頓されて記述されています.プロセスは,過程や手続きなどを意味し,コンピュータが処理するプログラムの実行単位としても使われます.《計算の庭》では,自動的にカードを読み取るRFID技術によってその実行プロセスをトレースすることができます.構想を立てて行動すると新しい現実が生まれ,そこでまた次の構想を立てるというように,考えたことを試しながら進んでいく過程には,問題解決プロセス一般に通じる美しさや楽しさがあります. 関連イヴェント アーティスト・トーク
日時:2008年4月26日(土)午後2時より[終了しました.]|→ 詳細|