ICC
《gravicells[グラヴィセルズ]−重力と抵抗》
2004年-
三上晴子+市川創太
《gravicells[グラヴィセルズ]−重力と抵抗》
撮影:木奥惠三

225枚のパネルを敷き詰めた床の上には,糸を張ったようなラインが規則的に表示されています.その上に足を踏み入れると,体験者の身体の重さ,傾き,動きの速度に床下のセンサーが反応して,周囲のラインが歪んでいきます.複数の人が自由に歩き回ることで起こる変化が,リアルタイムで画像・音・光へと変換され,相互に関係しながら空間全体が大きく変容していく体験型のインスタレーションです.

空間内には,重力とそれに対する抵抗力のような,相互に引き合う仮想の力の場が構築されています.体験者,そしてその場を共有している他の体験者がおよぼす力に加え,GPSによる会場の位置データや空間で変容していくアルゴリズムの力が相互に関係し合い,作品に影響していきます.複数の衛星から計算されるGPSデータは,インスタレーションの場自体が,重力により変動する相対的な場であることを示しています.この作品の一部として体験者は,ふだん気づかない重力というものにあらためて直面するだけでなく,この世界をはじめ自らの身体や知覚,世界観までもが,いかに重力という存在を前提に成立しているかを再認識することになります.タイトルの《gravicells》は,「Gravity」(重力)により,複数の要素としての「Cell」(細胞,小さな部屋)が影響しあう,ということからつけられたものです.

協力:山口情報芸術センター(YCAM)
三上晴子+市川創太 プロフィール

三上晴子は,「知覚によるインターフェイス」をコンセプトにインタラクティヴな作品で国際的に活躍する.市川創太は,新たな〈建築〉を探求するdNA (doubleNegatives Architecture)の中心人物として,自動生成による建築プロジェクト《Corpora》(2004年—)を展開.2人の初のコラボレーションとなるこの作品は,これまで国内外12都市で展示された.
三上晴子 http://www.idd.tamabi.ac.jp/~mikami/artworks/index_j.htm,市川創太 http://www.doublenegatives.jp

過去に参加した展示・イヴェント(三上晴子) 過去に参加した展示・イヴェント(市川創太)
キーワード:リレーショナル

体験者の存在やふるまいが空間に影響を及ぼし,作品全体をダイナミックに変化させていくこの作品は,「インタラクティヴ・アート」の中でも,とりわけ「関係性によって生じる」(リレーショナル)ものを扱っています.「重力」という,人間を含む複数の物と物とが相互に引き合う力を切り口に,さまざまな要素が相互に関係することではじめて生じる複雑な現象を扱うことで,世界における見えない関係性が,ここでは可視化されているのです. 関連イヴェント アーティスト・トーク
日時:2008年4月20日(日)午後2時より[終了しました.]|→ 詳細|