ICC
blog_top.gif
menu_bar.gif

OpenSky 2.0 スタッフ日記では, 展覧会の準備の様子やイヴェン トなどのレポートをしていきます.

最近の日記

過去の日記

東京ピクニッククラブの作品《ポータブル・ローン》の芝生の上でピクニック気分を満喫できるピクニック・セットが加わりました。1950年代のイギリス製のピクニック・セットだそうで、ディテールもとても素敵です。
《M-02》をバックに記念撮影など、いかがでしょうか?
ピクニック・セット準備中
東京ピクニッククラブのロゴ・マーク(敷物)
展示を見て《M-02》に乗ってみたい!と思われた方もいらっしゃるかもしれません。そんな方のために新たに追加されたのがこのイヴェ ントです。実際には、《M-02》はグライダーとハンググライダーの中間の性格をもっているそうです。以前八谷さんはメーヴェに形の似 た機体を探して、スウィフトというグライダーを見せてもらったこともあるということですが、機体を乗りこなすために、ハンググライ ダーのトレーニングを行ないました。

そこで今回は、八谷さんのハンググライダーの先生である桂敏之さんに「空を飛ぶことの魅力と実際」を映像を交えてお話しいただきま した。桂さんが見せてくださったのはハンググライダーに取り付けたカメラから撮影した、タンデムフライト(インストラクターと二人 乗りの飛行)と、競技飛行の映像です。初心者が飛べるようになるまでの流れや、競技での体験談(上昇風をとらえてカラスの群れと一 緒に飛んだこともあるそうです)など、興味深い話が盛りだくさんでした。上空の映像と風の音もとても印象的でした。
また、ふもとっぱらでの《M-02》テスト・フライトに参加した夏目裕美さん(ハンググライダー経験者)と橋本喜久恵さん(グライダー 経験者)には、《M-02》に実際に乗ったときの感想や、ハンググライダー、グライダーとの違い、ナウシカとの接点などを中心にお話を 伺いました。夏目さんと橋本さんが《M-02》に乗ったとき、それぞれに普段乗りなれている方法のクセが出たそうです。例えば、ハング グライダーでは、着陸の時に足で降りられるはやさにまで減速するため、《M-02》ではフレアーをかけすぎて失速しやすく、グライダー では、離陸の時にウィンチ曳航と《M-02》のゴム索の感覚に違いがあるなど、体験者ならではのお話が聞けました。
お二人が八谷さんのテストパイロット企画に応募するきっかけについて、やはり「メーヴェに乗れる!」という点には興味を感じたとの こと。桂さんのお話では、ハンググライダーに乗りたいという女性の中にも、ナウシカのメーヴェに憧れて練習を始める人もいるという ことでした。

トークを聞いて、空を飛んでみたいと思った方が多かったのではないでしょうか?トーク・イヴェント終了後の質問では、実際にハング グライダーを始めてみたいという声も数々聞かれました。
対談の様子(左から夏目さん、橋本さん、桂さん、八谷さん)
ハンググライダーの映像を交えてのお話
学芸員による2回目のギャラリーツアーを行ないました。
質問が集中したのは、二つの機体《M-02》と《M-02J》についてでした。会期中も度々質問を受けた《M-02J》に搭載されているジェット エンジンに関する内容を紹介してみます。
■《M-02J》のジェットエンジンは本物?
現在展示中のものは本物ではなく展示用に製作したものを使用しています。

■ジェットエンジンを搭載すればシミュレータのように自由に上空を飛べるのか?
実際には上昇時だけに利用し、飛行が安定したらエンジンを切り、滑空して下降する予定です。

今回は特に、男性・女性を問わず幅広い年代の方がご参加くださり、展示に興味を持っていただけたことが印象に残っています。
足場の悪い中ご来場くださった皆様、ありがとうございました!
《M-02J》を前に
《M-02》を前に
展覧会場に入ると、まず聴こえてくる軽快な音楽に耳を奪われた方も多いのではないでしょうか。これは、オープンスカイ・プロジェクトの音楽のすべてを手がけている宮崎貴士さんの作曲によるものです。八谷さんは、宮崎さんの作るメロディがとても好きとのことで、プロジェクトの開始から宮崎さんが音楽を作曲されています。このプロジェクトで聴かれる音楽はインストゥルメンタル(音楽のみで歌がない)の楽曲ですが、宮崎さんは、本来はシンガーソングライターとして活動し、とても素晴らしい2枚のCD(『少太陽』と『アステア』、どちらもOut One Discより発売中)を発表されています。
ちなみに、僕は宮崎さんの音楽を聴いて、ポール・マッカートニーや、ポール・ウイリアムズや、ランディ・ニューマンや、ハリー・ニルソンや、トッド・ラングレンや、ビフ・ローズといったミュージシャンの名前を連想することができます。が、宮崎さんの音楽はそれらともちがった、自身の世界を持っており、その音楽はジム・オルークからも賛辞を送られています。

今回は、宮崎さんと八谷さんの対談を第一部として、おふたりが出会ったなれそめや、その当時90年代初頭のことなど、またおふたりの『風の谷のナウシカ』体験について熱く語り合っていただきました。
ライヴは、現在パーマネントなバンド活動を構想中である、宮崎さんのバンドによる演奏で、パーソネルは、宮崎貴士(ヴォーカル&キーボード)、近藤研二(ギター)、田中亜矢(ヴォーカル)、佐々木絵実(アコーディオン)、高木コータロー(ベース)、廣瀬方人(パーカッション)の6人。アコースティックなたたずまいのアンサンブルで、宮崎さんのCDから選曲されたラインナップに加えて、新バンドのレパートリーになる、田中亜矢さんがメイン・ヴォーカルをとるナンバーなどが披露されました。
対談の様子(左から八谷さん、宮崎さん)
宮崎さん
ライヴの様子(左から田中さん、廣瀬さん、佐々木さん、高木さん、近藤さん、宮崎さん)
中ハシ克シゲさんは彫刻家として活動を続け、近年では二つのアート・プロジェクトを手がけている作家です。
プラモデルを接写し、その後膨大なサービス版プリント写真を繋いで原寸大の零戦を再現する「ZERO Project」、戦争にまつわる歴史的 場所の歴史的一日を同様の技法でレリーフとして表現する「On the Day Project」は、それぞれ世界各地で断続的に発表されています。 冒頭では八谷さんたっての希望で対談が実現したというお話もあり、夢の対談となりました。

八谷さんが両プロジェクトの共通点として注目したのは、「1/1(サイズ)の飛行機を作品化することによって戦争を考えるところ」で すが、対談が進むにつれ、次第に両者の考え方の違いが見えてきました。
オープンスカイ・プロジェクトは、「個人的に飛行装置を作ってみるプロジェクト」として開始されました。そもそも、現在日本国内で 設計・製造されている民間用の航空機はないのだそうです。その背景には敗戦後の連合国による航空禁止令の影響などが考えられるとい います。航空機開発と軍事への応用が軌を一にしてきたことも、目を背けることのできない事実です。しかし、八谷さんは実機制作を本 格的に進めるうちに、すでに戦前にジェットエンジンを付きの無尾翼機の構想があったことを知り、当時の航空技術の高さに改めて驚か されたそうです。プロジェクトには、「個人的に飛行装置を作ってみる」ことでアーティストの立場からエンジニアリングの発想を未来 につなげたいという八谷さんの視点が含まれています。
一方、「ZERO Project」では、機体の共同制作を通じて戦争にまつわる記憶を掘り起こしていくという側面があるように思います。中ハ シさん自身、幼い頃のプラモデル遊びを通じて間接的に戦争を知った世代でもありますが、このプロジェクトでは、実機ではなくプラモ デルを接写した写真を素材とし、多くの参加者との共同作業で写真をつなぎ合わせて原寸大の零戦をつくります。完成した機体は最後に 燃やされますが、記憶そのものは消えずに残り参加者の対話によって連鎖していくという見方もできるのかもしれません。
飛行機という共通項から、それぞれに異なる立場で制作をする二人のアーティストのお話を聞く、貴重な対談となりました。
対談の様子(左から中ハシさん、八谷さん)
中ハシさんによる「ZERO Project」の説明
12月15日にスタートした「八谷和彦─OpenSky 2.0」展ですが、はやくも会期半ばにさしかかりました。
会場入口にお集まりくださった25名あまりのお客様をお迎えして、当館学芸員によるギャラリーツアーを行ないました。展覧会全体の見 所はもちろん、個々の展示作品についての解説や展示空間の構成などに関する話を交えつつ、会場をご案内します。所要時間は約45分。 ツアー終了後には、オープンスカイ・プロジェクトに関するさまざまな質問も受け付けております。
次回のギャラリーツアーは2月18日(日)14時より行ないます。お気軽にご参加ください。
展示会場入り口に集合
ギャラリーツアーの様子
 カポエィラはブラジルの格闘技として知られています。八谷さんは、オープンスカイ・プロジェクトの開始後、機体に乗る際のボディバランスと柔軟性の向上を目的に、カポエィラを習い始めたそうです。格闘技と言っても、歌と楽器演奏を伴いダンスの要素も含まれているカポエィラは、相手の目を見て互いの手を合わせてスタートします。対面した者同士、思わず笑顔がこぼれるリラックスした精神状態も、八谷さんが機体に乗る時、緊張感をほぐすのに役立つそうです。
 ワークショップでは八谷さんのカポエィラの先生、南城充さん(カポエィラ・ヘジョナル・ジャパォン)と11人のカポエィリスタたちをお迎えしました。最初に約30分間、みなさんに華麗なパフォーマンスを披露していただきました。その後、参加者も一緒にストレッチで体をほぐし、基本的な型を覚えるところからはじめ、最後には二人で組になって練習するところまで行ないました。次々と組む相手を変えていくうちに自然とコミュニケーションが生まれ、会場はいつになく熱気に包まれました。
カポエィラ・ヘジョナル・ジャパォンのみなさんによる演舞
(左から)八谷さん、南城さん

カポエィラに使用する楽器
(左から)ビリンバウ、アタバキ、パンデイロ
ストレッチは入念に

はじめは恐る恐る…
だんだん激しくなってきました
オープンスカイ・プロジェクトで設計された飛行機を、実際にペーパープレーンで作って飛ばしてみるワークショップ。現在展示中の《M-02》の前身にあたる《M-01》をもとにつくられたペーパープレーンのキットから、参加者が各自で組み立てます。今回のワークショップでは、フィン(垂直安定板)の部分を《M-02》のものに替えて、機体をヴァージョン・アップさせました。
(有)オリンポスで機体制作に携わってこられた山崎宏二さんをお迎えし、まずは機体の特徴を説明していただきました。無尾翼機がなぜ飛べるのか、その秘密は翼のかたちにあるそうです。上下に折れ曲がった形のガル翼、内翼にだけエルロン(補助翼)をもつ主翼には、バランスをとるために必要な尾翼の機能がすべて収められているのだそうです。四戸さんが葉書とダブルクリップを使った実験を交えて解説してくださいました。
制作は、山崎さんと八谷さん、四戸さんのサポートで進められました。参加者の中でも、室内模型飛行機の世界記録を持つ石井さんからは制作や飛ばし方についてアドヴァイスをいただきました。紙飛行機の専門家の方もいらっしゃり、どなたも腕をふるってのご参加となりました。全員が組み立て終わったのは約1時間後。しかし、ここで終わりではありません。ペーパープレーンを上手に飛ばすためには、付属のゲージを使って翼の角度を調整するほか、実際に飛ばしてみて再度微調整する必要があります。遠くまでまっすぐに飛ばすためには、とにかく機体の左右を対称に保つこと。飛ばし方は、飛行機が飛んでいくラインを想像してそれにそって腕をのばすようにするのがコツだそうです。会場内では飛ばしてみては機体とにらめっこしている参加者の姿が見受けられました。
年明け最初のお年玉ワークショップ企画ということで、最後にみんなで自作の飛行機を飛ばし、一番飛距離の長かった人から順に八谷さんから賞品が贈られました。賞品は、オープンスカイ・プロジェクトの写真、ワッペン、今年の干支イノシシヴァージョンのコモモのうちのいずれか。見事遠くへ飛ばしたみなさん、おめでとうございました。そして長い時間ご参加くださったみなさん、本当にお疲れ様でした!
会場風景
山崎さんを囲んで




四戸さんによる解説
さっそく、制作
飛行機を実際に飛ばしてみる

完成したペーパープレーン
作家自身から展示の見どころを紹介する絶好の機会とあって、多くのお客様にご参加いただきました。
ありがとうございました。
八谷展の展示室入り口にはあえて「小さなお子様歓迎!」の旨を明記していますが、会場内には子どもから大人まで楽しめる工夫が隠されています。会場の「タネあかし」も交えつつ行なわれたギャラリーツアーは終始和やかなムードに包まれました。今回は会場の様子を6枚の写真で紹介します。
2003年にスタートしたオープンスカイ・プロジェクト。
その間撮りためられた写真や資料にまつわるエピソードを八谷さんが解説します。写真右よりの青空をバックにしたOPEN SKYのポスターは熊本市現代美術館での展覧会の際のもの。
東京ピクニッククラブの作品《ポータブル・ローン》の芝生の上に腰掛けることもできます。




《M-02》の機体について説明します。今回の展示では翼の構造の一部を見ることができるようになっています。外翼のリブはねじりさげを計算して設計されているのでひとつひとつ違うところが見どころとのこと。
《M-02》の前でふもとっぱらでの公開フライトの映像を見ながら解説は続きます。実際に乗るためには、ハンググライダーの練習を積むこと、器械体操の経験があること(空中でパニックにならないため)などがポイントになります。
展望台の上で。ここから展示室全体を見下ろすことができます。フライト・シミュレータを体験する前に用意されている、オープンスカイ・プロジェクトに関するクイズについて説明中。

質問に答える八谷さん。オープンスカイ・プロジェクトにかかる費用についての質問などが出ました。
「Open Sky2.0 八谷和彦展」関連イヴェントの第一弾。今日は《M-02》《M-02J》の設計・製作に携わった四戸哲(しのへ さとる)さんをお迎えして、プロジェクトの技術面に関する解説やテストフライト時の体験談などを交えた対談となりました。

四戸さんはご自身いわく、中学生の頃から典型的な模型飛行機少年だったとのこと。日本大学理工学部航空宇宙工学科では木村秀政先生に師事し、1986年に(有)オリンポスを設立しました。四戸さんは、オープンスカイ・プロジェクトにおいて構想される機体イメージに対し、航空エンジニアの立場から実現可能性を判断し、2003年のプロジェクト開始以来機体の構想から設計、製作に携わってきました。

オープンスカイ・プロジェクトの最終目標は、人(体重50Kg程度を想定)がひとり乗れる「パーソナルジェットグライダー」を作ること。機体の形状は、宮崎駿氏による『風の谷のナウシカ』に登場する架空の航空機「メーヴェ」の機体コンセプトを参考にしつつ、飛行可能な機体となるよう変更・翻案を行ない設計しているとのことです。対談では、模型飛行機の流儀でつくられた《メーヴェ1/2》のテストフライト以後、実機での構造設計を確認するための12.5分の1の模型製作、実機製作の理念に基づいた5分の1モデル、《M-01》から《M-02》《M-02J》へ至る過程を画像を交えて解説しました。その際、八谷さんの配慮でインターネット上の掲示板に寄せられたプロジェクトに対する質問や批判に答え、プロジェクトに対する誤解を解いていくかたちですすめられました。ここでは会場で話題となった内容の一部を紹介します。

■機体名のつけ方について
Q.《M-01》,《M-02》,《M-02J》の違いは?
A. 機体の設計コードとしてつけている、そのため同じコード名のM-02とM-02Jの翼は入れ替えは可能
Jはジェットエンジンの意

《M-01》の翼は開発の過程で《M-02》に吸収されました。(今回の展示では《M-02J》につけられている翼)
実際に展示している《M-02》の胴体と《M-02J》の翼はテストフライト時に使用したものです。
《M-02J》のジェットエンジンと胴体は展示用のものを使用しています。

■法律上の定義(ジェットエンジンがある場合とない場合の違い)
M-02J 自作航空機 ホームビルドプレーン(有資格者・乗るためにはジェット単発自家用の資格が必要)
M-02 プライマリーグライダー(法律上誰でも乗れる)

■女性限定でパイロットを公募した理由
女性を起用してムーヴィーを公開することを想定していた。ただし、あくまでハンググライダー、グライダー、パラグライダーの経験者であることを確認した上で選考している。機体の特性を知る上でも、熟練した経験者にパイロットをつとめてもらう意義がある。

八谷さんは、エンジニアリングと妄想や空想がまじったものをつくるのがアーティストの立場だと考え、特定の愛好者だけでなく例えば女性も興味を持つような航空のプロジェクトを行ないたいと考えました。「メーヴェのかたちをした飛行機が実際に飛ぶ」ことに対する関心や注目度の高さについては、技術者である四戸さんもプロジェクトに参加して改めて驚かされたそうです。
会場風景
対談の様子
footer.gif