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イヴェント・レポート スタッフ・ノート

「おしゃべりアート探検隊」レポート

2017年9月17日 20:20

8月27日に開催した,「おしゃべりアート探検隊」は,小学生を対象とした対話型鑑賞プログラムでした.


対話型鑑賞は,解説を聞くことを中心とするギャラリーツアーとは異なり,作品から得た印象や感想をグループで話すことで,個人での鑑賞だけでは得られないさまざま解釈に触れ,想像力を働かせることや他者とのコミュニケーション能力を育む鑑賞法として,1980年代にニューヨーク近代美術館で子ども向けの教育プログラムの一環としてスタートしたとされています.日本でも,2004年度から施行されている学習指導要領で盛り込まれた「美術館・博物館の利活用」の手段として,教育現場からも注目されています.

今回は「オープン・スペース 2017 未来の再創造」の展示作品からグループごとに3作品をめぐります. 
ファシリテーターのみなさんは,NPO法人ARDA(芸術資源開発機構)に所属されています.ふだんは絵画などを中心に対話鑑賞を行ない,鑑賞している途中にも作品の状態が変化することの多いメディア・アートを対象とするということで事前に何度もICCに足を運び,今回のプログラムで取り上げる予定の作品だけでなく,「オープン・スペース 2017 未来の再創造」のすべての作品について理解を深め,準備を重ねて当日を迎えました.

さて,初対面のファシリテーターを前に保護者と離れて参加しているこどもたちは少し緊張気味ですが,ニックネームの名札を作ってもらい,自己紹介を始めるとこれまで行ったことがある美術館のことを話してくれたりと,だんだん打ち解けていきます.

学年の近い参加者どうしでグループ分けをし,それぞれの作品の「探検」に出かけます.

《  鈴》では,最初に作品にできるだけ近づいて,不定期に鳴る鈴の音を聞き逃さないように,小さな声で話しながら,ガラスドームの中に何が入っているのか,鈴が鳴るしくみを考えます.台の下には何もないようだし,と手品の種明かしを探すように展示室の隅々も見てみます.鈴が鳴るときにドームの中で光る部品を見つけた子から「いま,光ったよ!」と声があがると,ドームの中をじっと観察してそれぞれの部品のつながりを考えます.

少し離れたソファに座って,ファシリテーターからこの作品では目には見えない放射線を作品を通じて感じることができるという説明を聞くと,ちょっと難しい言葉の「放射線」についても質問が続きます.

順番に作品を体験しながら,中学校の美術で学習する色相環についても興味津々で鑑賞したのは,《herering》.デヴァイスの操作と色や音の変化がわかりやすく,こどもにも楽しい要素が多い作品ですが,作品解説に含まれる「共感覚」についてもファシリテーターが話題をつなげます.楽しく作品を体験するだけでなく,この作品が作られた背景にどのような意図があるのか,みんなで考えてみます.

ICCコレクション作品の《ジャグラー》は,運転状態だけでなく,静止している状態で彫刻のいろいろな部分を見て,オブジェのそれぞれがどのような違いがあるのか次々に気づいたことを挙げていくと,ほかの展示室とは違う点にもこどもたちは気づきます.作品と鑑賞者の間にあるガラスや部屋の隅に付けられた照明の役割も,的確に言い当てた作品初見のお子さんもいたのにも同行したICCスタッフも驚いていました.

《Oto-megane》は初めて作品を鑑賞する人もすぐに虫眼鏡のような形の「音めがね」を手にとり,直感的に体験されることの多い作品です.今回はあえてファシリテーターは,作品の音を聴くことから鑑賞をスタートしました.こどもたちはどこから音が聞こえているのかを探したり,音が何から発生しているのかを想像します.視覚からの情報を少なくすることで想像できることもたくさんあることを気づかせてくれます.

グループによっては予定していなかった展示作品に関心を示す参加者がいた場合には,少し寄り道してほかの作品も鑑賞しました.《エネルギーの風景》《銃弾と弾痕のあいだ》《The Latent Future》では,事前に作品の情報を伝えていない段階でも,「きっとあの小さい点のひとつひとつにも意味があるんだよ」と話してくれた男の子もいました.

スタートした地点に戻って,それぞれのチームでプログラム全体の感想を話し合います.お子さんたちからの感想は途切れずに続きますが,そろそろ終わりの時間です.

ファシリテーターから「いま,見てきたことやお話ししたことをお家の人にも,お話ししてみて時間がったらぜひまた展示を見てみてくださいね」と,声をかけられると.ご挨拶をして,少しはなれた席から様子を見守る保護者の方に向かい,話したくてたまらないという様子で保護者のみなさんと展示室に戻っていきました.

メディア・アート鑑賞では,鑑賞者による能動的な体験を伴う場合が多いことから,鑑賞にあたってのプログラムの組み立てによっても,鑑賞者の反応が大きく変わることなど,ICCのスタッフにとっても得るものが多い機会となりました.



オープン・スペース 2017 未来の再創造
会期:2017年5月27日(土)—2018年3月11日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
開館時間:午前11時—午後6時
*22日(金),23日(土)のみ開館時間を午後8時まで延長します.
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日.なお,2/12[月]は休館,2/13[火]は開館),保守点検日(2/11),年末年始(12/28─1/4)
入場無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]


[A.E]