映像の中の3D空間には,過去に実際に起きたニュースのほかに,無限に近いさまざまな文章が埋め込まれています.その現実のニュースから「ありえた/ありえる」かもしれないニュースが生成されます.
この作品は,言語モデルの中に畳み込まれた,無限に近い文章の組み合わせ可能性に着目し,現在インターネット環境などに顕著に表れている,真実と虚構とがないまぜになってしまう現実社会の脆さを考えようとするものです.過去の大量のニュースを学習した人工知能(AI)は,Twitterからのニュースフィードを常に受け入れ,ニューラル・ネットワークの中に埋め込まれた「すでにある」,しかし「まだ起きていない」,オルタナティヴなもうひとつのニュースを生成し,提示し続けます.そこには,ホルヘ゠ルイス・ボルヘスの小説「バベルの図書館」に登場する,表現可能な全ての組合せを収めた図書館のごとく,組み合わせにより生成された大量の架空のニュースが含まれ,虚構と事実の間に揺らぎをもたらします.
表示されている3D空間は,各文章が持つ高次元の特徴ベクトル(文章の特徴を数列に変換したもの)を,3次元でマッピングしたもので,空間内での距離が文章間のセマンティック(意味的)な距離に対応しています.
* 学習データの一部に「CD-毎日新聞データ集 2016 版」を使用しています.
サウンド:澤井妙治
アシスタント・プログラマー:梶原侑馬,ロビン・ジャンガス