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《  鈴》 [2013] “bell”

三原聡一郎

《  鈴》

作品解説

本作は科学技術の発展した現代において,人間が知覚出来ないエネルギーを扱うことをテーマにした作品です.ガラスドーム内の電子回路に含まれたガイガー゠ミュラー計数管(GM管)が環境放射線を検知すると,同じくドーム内に収められたガラスベルが,風鈴のように音をたてます.

この作品は,風鈴の起源とされる,邪気を捉えて払うために吊るされたといういわれをモチーフとしています.人の知覚外にある存在は,その性質ゆえに畏れという感情を喚起しますが,知覚できるものに(理屈上)転化することで,その畏れを克服しようとしました.

放射線は19世紀末に発見され,核物理学の進歩を促し,現在では乾電池駆動の放射線計測器が市販されるほど身近になりました.科学的に定量的に捉えられるエネルギーであることが分かった現在でも,他の物質やエネルギーに比べると,緊張感をもって数値に臨むことが多いでしょう.その不思議な感覚を「現代の邪悪なるもの*」の概念を通じて作者は本作品を通して今も考えています.

この作品の根幹はリアルタイム・センシングです.世界各地で現在進行形である本テーマを,メタファーや痕跡を越え,実際の計測に基づき捉えようとしています.ガラスドーム越しに不規則に聞こえてくる鈴の静かな音に耳をすますと,世界との向き合い方についてあらためて考えるきっかけになるでしょう.

《  鈴》は,東日本大震災後に作家が開始した「空白のプロジェクト」の二作目です.

* 論文「人工物工学の提唱」(吉川弘之,東京大学,1992)からの引用

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