ICC





はじめに
入場料
展示作品




《Kinetic Typography》
《テーブルの上の音楽》
《L.A. Journal》
《境界線》
《 BeWare02: Satellite》
《視聴覚化された「間」》
《存在,皮膜,分断された身体》
参加作家
関連イヴェント




シンポジウム
「タンジブル・ビット:人とビットとアトムの間の境界をデザインする」

シンポジウム
「ウェアラブルコンピュータ」

シンポジウム
「アートとテクノロジーの境界線」

コンサート
シンポジウム
「複合現実感〜現実と仮想の融合から生まれる新しいメディア環境」

ギャラリーツアー(草原 真知子 )
シンポジウム「センソリウム」
ギャラリーツアー(中谷 日出)
シンポジウム(石崎 豪)
ギャラリーツアー(坂根 厳夫)
シンポジウム(岩井俊雄 )
ギャラリーツアー(佐々木 正人)
 
1999年6月22日(火) 〜 7月18日(日) [終了しました.] ギャラリーD





展示作品


《境界線》
" Boundary Functions"
スコット・ソーナ・スニッブ



 


「境界線」は,個人的な空間および個と社会との関係を探究する作品である.ここでは,頭上から床面に向けて投写される線が,おのおのの観客を分かつ境界線となる.作品の空間に1人で入っても何も起こらないが,2人で入るとその中央に空間を2つに分けるように1本の線が現われる.2人が動くと2人からの距離が同じになるように線も動いていく.さらにフロアに人が入ると細胞状に分割されるが,その細胞はつねにその中にいる人物の方が他の人々よりも近いという数学的性質をもっている.

観客を囲むこの空間は,数学ではヴォロノイ図形あるいはディリクレ分割とよばれるもので,さまざまな分野で使われ,自然においてもあらゆるスケールで見ることができる.人類学や地理学では,人間の居住パターンを記述するために使われ,生物学では,動物の縄張りや植物の勢力争いのパターンとして,化学においては,水晶構造の中への原子のパッキング,天文学では星や星団への重力の影響,マーケティングにおいてはチェーンストアの戦略的な配置,ロボティックスにおいてはパス・プランニング,そしてコンピュータ・サイエンスにおいては最短距離点と三角測量問題に対する解決として.この図形は定数eやπなどと同じように数学と自然の間のつながりを表わしている.

投写される図形は,個々の人間とその間にある空間との見えない関係をダイナミックに可視化するものである.個人的な空間,そして他者との間につねに存在する境界線という実体のない観念がそこに具体化される.1人ではなにも起こらないこの作品は,他者との物理的関係が前提とされ,自身の孤独な反映であるようなヴァーチャル・リアリティではなく,複数の人が参加することによって初めて成り立つヴァーチャル・スペースなのである.

この作品のタイトルは,シオドア・カジンスキーのミシガン大学における1967年の博士論文にちなんだものである.「ユナボマー」として知られる[爆破犯]カジンスキーは,個と社会との葛藤のひとつの病的な例である.それは社会の中で生きようとすることと,他者の思考や存在と折り合うことのできない孤独や個性との間の葛藤であり,折り合いなのである.論文そのものは,社会の大多数を受け入れようとしない言葉や象徴にはまり込んだ,潜在的な反社会性をもつある種の科学的言説の一例である.このインスタレーションでは,ダイナミックな視覚的表象によって,数学的な抽象性を理解しやすいものにしている.

技術的方法

インスタレーションは,天井に置かれたカメラと,鏡を通して床に投射するプロジェクターとからなる.カメラとプロジェクターは,カスタム・ソフトウェアによって下方の床の上を動く人々のトラッキングをおこなうPCコンピュータに接続される.ソフトウェアによってヴォロノイ図形が生成され,床の上に投映される.