現代は,情報通信技術の発展に伴い,場所や時間を選ばず,誰とでも交流できる世界が実現され,さまざまな利便性がもたらされてきました.しかし,人同士のコミュニケーションにおいては,個人ごとに身体的,認知的,文化的などさまざまな違いが存在するため,“完全に伝える”ことは困難です.
一方で,この「人それぞれの違い(=個別性)」に着目し,“伝わらなさ”という視点を用いて伝えるという行為自体を考えることで,新たな情報通信技術について考えることができます.現在の技術では表現しきれない,各人の身体,認知の特性,感情の揺らぎといった,伝わらないものの中に現われる個人の本質はどのように伝えることができるか,に着目しています.
2020年は,世界的な情報発信と共有の場となり,多様な人々との交流が行なわれます.本展覧会は,共感と多様性をテーマに,異なる個性を持つ個人が,どのように自分と向き合い,他者と関わり合い,互いを理解し,つながることができるのかを体感する「公開実験の場(OPEN STUDIO)」として開催されます.
展覧会内では,NTTの研究所の社会基盤技術(インフラストラクチャー)と,ほかの研究機関やアーティストとの協働による実験的な展示+デモンストレーションを通じ,新たな技術や研究成果の公開にとどまらない社会での価値をイメージした作品を紹介します.