チャンネルICC
企画展「多層世界の歩き方」のオープニング・トークを1月16日(日)にライヴ配信し,ICCのYouTubeチャンネルにてそのアーカイヴ映像を公開しました.イヴェント当日は,ゲストとして本展覧会の共同キュレーターである谷口暁彦さんと監修をしていただいた豊田啓介さんにお越しいただき,ICC主任学芸員の畠中実とともに企画展の会場内から配信を行ないました.3人で会場内を巡り,各展示作品にフォーカスしながら展示のコンセプトやさまざまな社会的背景に関するお話を深掘りしていく内容になりました.
ICCでは昨年度から引き続き,実会場とヴァーチュアル会場を連動させた展覧会を行ない,情報世界が現実世界に加速度的に入り込み多層化していく世界における新しい美術館の活動モデルを考える試みを継続しています.谷口さんと豊田さんにはその取り組みの構想段階からアドヴァイスをいただき,これまで協働してきました.
ヴァーチュアル初台内オペラシティ街区の一部
ヴァーチュアル初台内のハイパーICCの外観
「多層世界の歩き方」展のヴァーチュアル会場
「多層世界の歩き方」展のリアル会場
そして本展覧会はタイトル通り「多層世界の歩き方」を考えることがテーマとなっており,特に豊田さんが提唱する「コモングラウンド」的な多層世界のあり方を,キーコンセプトの一つとしています.「コモングラウンド」については豊田さんにトークの冒頭でも説明していただきました.
豊田さんが提唱する「コモングラウンド」というのは,デジタルの世界とフィジカルの世界が共存する未来を創造するためには,両者を分け隔てなく行き来できるためのプラットフォームが必要になるだろうという考えを元に,リアルとデジタル,物と情報の媒介となる「共有基盤」を指しています.そして本展示ではアーティストを多層的な世界としての「コモングラウンド」を行き来する存在としてとらえ,作品鑑賞を通じてこの先存在しうる「コモングラウンド」を構想する手がかりとその歩き方を考えていこうとしています.
本展示の出品作家でもある谷口さんからは,ご自身のアヴァターをはじめ,ヴァーチュアル空間や3Dオブジェクトの取り扱い方などについてアーティストの目線から興味深いお話を伺うことができました.
メディア・アートの作品には,われわれの生活を取り巻く情報技術についての価値や付き合い方を多面的に考える視座を与えてくれるものが多くあります.例えば今回は,ミラーワールドやメタヴァースのような仮想空間が存在すること自体にどんな新しい価値や体験が生まれるのか,その可能性を思索することができそうです.
こちらのアーカイヴ映像は会期終了後もご覧になれます.また「多層世界の歩き方」展と「オープン・スペース2021 ニューフラットランド」展は2月27日をもって終了しましたが,仮想空間の中のもうひとつのICC「ハイパーICC」では,一部展示作品をオンラインで公開を継続しています.
実際に展示をご覧になった方も,そうでない方も新たな気付きがあるかもしれません.ぜひご覧ください.
[M.A.]