ICC
《インタラクティヴ・フィールド》
1999年
マーティン・リッチズ
《インタラクティヴ・フィールド》
撮影:木奥惠三

テーブル状のステージの上には,表と裏を白黒にそれぞれ色分けされた36枚の長方形のパネルが直立してグリッド状に整然と並んでいます.観客がステージに近寄ると,パネルは観客の存在や動きなどに反応して動き始めます.パネルの動きは,観客の動きに直接的に反応したり,まるで振り付けられたダンスのようにすべてのパネルがシンクロして動き出したり,その状況に応じて変化します.

ステージの周囲には28個の赤外線センサーが設置されており,作品の周りにいる人の数やその位置,方向や動きなどを分析し,それによってパネルの動きが決定されます.それは,動く彫刻のようであり,モーターによって駆動され,左に右に,ときに早く,ときにゆっくりと回転し,プログラムによってさまざまなヴァリエーションが生み出されます.その動きがまた観客の反応を誘発し,インタラクションの連鎖を引き起こしますが,外部からの変化が感知されないならば,この作品にも変化は訪れません.また,多数の観客がステージを取り囲んだ場合には,プログラムされたある動きが再生されるようになっています.ときには,作品から離れたとたんに,一斉にパネルが動き出すこともあるかもしれません.このように,作品が予期せぬ動作をすることによって,観客と作品の反応との間にある関係性を考えるきっかけが与えられます.また,動きにともなってモーターが生じるサウンドも作品の一部となっています.
*ICCビエンナーレ'99 準グランプリ作品

マーティン・リッチズ プロフィール

マーティン・リッチズは,建築家として働いたのち,1978年より歩行や発話などの人間の行動を模した自動機械を制作するようになる.1980年以降は,サウンド・インスタレーションを中心に,《フルート演奏機械》など数多くの音楽機械を制作し,音楽家によってそれらのために多くの作品が書かれている.また,時計制作技術にも関心を寄せ,自作の精巧な時計を制作している.現在ベルリン在住.

過去に参加した展示・イヴェント
キーワード:オートマタ

おもに18,19世紀に作られた西洋からくり人形を指す「オートマタ」には,もともと「自動機械」という意味があります.時計の製造技術など,その時代の技術の粋を組み合わせて製作されたオートマタを,ロボットの原型とみなすこともできます.現代のロボットは,物理機構のほかにセンサーやコンピュータ上で動く複雑なプログラムが導入されることによって,オートマタのギリシャ語の語源「automatos」が意味する「自らの意志で動くもの」を思わせるものになっているといえるかもしれません. 関連イヴェント アーティスト・トーク
日時:2008年4月20日(日)午後4時より[終了しました.]|→ 詳細|