ICC
《ヴィッセンゲヴェックス(知識の繁茂)》
2007年
クリスタ・ソムラー&ロラン・ミニョノー
《ヴィッセンゲヴェックス(知識の繁茂)》
撮影:木奥惠三

モニターに人が近づくと,画面上で仮想の植物が発生し,生長していきます.植物の種類や生長のしかたは,鑑賞者とモニターとの距離や,鑑賞者がどのように動くかによって決まります.たとえば,じっとしていると,1種類の植物が発生しますが,ゆっくり歩くと,植物は鑑賞者の動きに従い,隣のモニターへも伸びていきます.また,同時に参加する人が多いほど,植物はより勢いよく生長します.

この作品は,ドイツのブラウンシュヴァイク市中心部にある広場に約1年間仮設された,ガラス張りの建物の外壁面に設置されました.建物には,カフェ,棚にある本を自分の本と交換できる図書室という2つの機能があり,この作品は,通行者の注意を惹き,建物の中へと誘導する目的で,同市の委嘱により制作されました.ここで作者は,会話や本の交換など,建物の中で行なわれる直接/間接を問わないさまざまなコミュニケーションによって人々が知識をやりとりする様子を,仮想植物が生い茂るさまになぞらえています.ものごとのとらえかたは,人によって異なります.また,時を経ることによって,同じものごとがまったく違って感じられることもあるでしょう.同じように,どのような植物がどのように生長するかは,鑑賞者が作品へどのように関与するかにゆだねられているのです.

クリスタ・ソムラー&ロラン・ミニョノー プロフィール

クリスタ・ソムラーは植物学と美術,ロラン・ミニョノーは美術と電子メディアをそれぞれ専攻し,1992年から共同で作品を制作している.「生命システムとしてのアート(Art as Living System)」を掲げ,コンピュータを用いたインタラクティヴ作品の第一人者として活躍.1994年から2004年には,京都にある国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の研究者として,また岐阜にある情報科学芸術大学院大学(IAMAS)の助教授として日本に滞在した.現在は,オーストリアにあるリンツ工科造形芸術大学のメディア学部インターフェイス・カルチャー学科長として教鞭をとっている.

過去に参加した展示・イヴェント
キーワード:インタラクティヴ

鑑賞者が関わることによって,作品がさまざまに反応したり,見え方を変化させたりすること.コンピュータの計算能力の向上や,人間の身振りや環境の変化を感知するセンサーなどの発達によって,1990年以降大きな関心を集める動向になり,現在では商業空間などでもよく見られるようになりました.作品は,体験する人によって違うものとして現われるため,鑑賞者の積極的な参加によってはじめて成立し,時間とともに変化し続け,一定の状態に留まらないのが特徴です.