チャンネルICC
ICC キッズ・プログラム 2023「こんにちは、もうひとりのじぶん」展の出品作家・木原共さんによるワークショップを,展覧会初日の8月1日(火)に開催しました.今回の記事ではそのワークショップの様子と,木原さんの出品作品《Future Collider》(フューチャー・コライダー)についてお伝えしていきます.
《Future Collider》では,この先の未来に起こりうる社会的な出来事や変化を想像して考えられた,未来に存在するかもしれない架空の看板や標識を,ウェブアプリケーションを使って現実世界にARで設置し撮影するという体験ができます.
展示されていた映像内,ARの操作画面
これまで本作品が展示されてきた各地でワークショップが開催され,参加者から出たアイデアを元に,地域の未来に根ざした新たな架空のAR看板/標識が生まれています.そのようにして鑑賞者と共同で作品をアップデートしていく,市民参加型のプロジェクトとしても作品が展開されてきました.
今回のキッズ・プログラムでは,作品の体験方法やこれまでのワークショップの様子を紹介する映像の展示と,会場内のワークショップ・スペースに,《Future Collider》のワークシートが用意されていました.来場者に「こんな出来事がこの先起こるかもしれない」ということを考えてもらい,看板や標識に限らず,未来の街の姿などを描いたワークシートを,回収ボックスに投函してもらうようになっていました.
看板が並んでいるように設置されていたディスプレイ
木原さんが作成したワークシートの記入例
日々多くのアイデアが寄せられ,回収したワークシートは随時木原さんにも見ていただいていました.キッズ・プログラムの会期中には叶いませんでしたが,ICCで集まったアイデアからも新たなAR看板/標識が追加される予定だとのことです.
また8月1日(火)には,木原さんと一緒に東京オペラシティ内を巡りながら,《Future Collider》の作品体験を行なうワークショップを開催しました.同日に開催された出品作家によるギャラリー・トークの終了後に,その場で参加希望者を募って実施されました.
木原さんを先頭にICCから出発し,2階からガレリアに出て1階のサンクンガーデン周辺のエリアまで歩いていき,要所ごとに立ち止まりながら自由に作品体験をしていきました.
2階ガレリアで各々が作品体験をしている様子
親子で参加してくださった三人組は,ものすごく大きな標識を壁に設置してみたり,三人で協力して標識の支柱を掴んでいるような写真を撮ってみたり,コンビニの外壁のガラスに「この先プラスチック禁止地区」の標識を貼り付けてみたりと,作品の楽しみ方をすぐに理解して親子で協力しながらさまざまな設置の方法を試していました.
他の参加者の方々も木の幹に看板を取り付けてみたり,実際に設置されている掲示案内の中に紛れ込ませるように標識を貼り付けてみたりと,この場所にこんな看板/標識があったらおもしろいかもとさまざまに試行錯誤されていて,大人も夢中でiPhoneを操作している姿が印象的でした.
また木原さんはICCに戻る途中で,ビル内2階のオフィスロビーに佇むアントニー・ゴームリーによる彫刻作品《トゥー・タイムズⅡ》の背中に看板を取り付けてみており,AR作品ならではの,現実世界へ介入する楽しみ方を見せてくれました.
《Future Collider》は,新型コロナウイルスの感染拡大による影響が大きかった2021年に制作された作品です.木原さんは街中にソーシャル・ディスタンスやマスク着用を促す看板が一斉に現われた様子を目にし,社会的に大きな変化が起きた時に見られる都市の変化のひとつに,新たな看板や標識の登場があるのではないかと考え,本作品を思いついたのだそうです.
生活を送る中で当たり前に存在していて,日々無意識に目にしている看板や標識ですが,その存在に注目して少し手を加えてみるだけで,非日常的な違和感を生むことが分かりました.短い時間での実施となりましたが,そうした都市をハックするようなおもしろさが十分に感じられるワークショップとなりました.
写真中央:木原共さん
ICC キッズ・プログラム 2023「こんにちは、もうひとりのじぶん」展は,8月20日(日)で終了しました.今年度も多くの方にご来場いただき,ありがとうございました.
ICCのYouTubeチャンネルでは,8月1日開催のギャラリー・トークのダイジェストを引き続き公開しています.そちらもぜひお楽しみください!
ギャラリー・トーク ダイジェスト公開ページ
(YouTube上のページへ移動します)
[M. A.]