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イヴェント・レポート

「わたしたちのウェルビーイングカード」ユーザーミーティング レポート

2022年3月23日 13:00

《わたしたちのウェルビーイングカード》に関連した2回目のワークショップを2022年2月15日に開催しました.講師は前回と同じく,NTTコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊淳司さんです.


ICC キッズ・プログラム 2021「チューンナップ じぶんをととのえる」展と,「オープン・スペース 2021 ニュー・フラットランド」展のリサーチ・コンプレックス NTT R&D @ICC「触覚でつなぐウェルビーイング」で展示をした《わたしたちのウェルビーイングカード》は,それぞれの人がいきいきと生きること(ウェルビーイング)について,意識化し,それらをはかることを目的に研究開発された27種類のカードです.実物のカードのほかに,ハイパーICC内にはウェブ版が公開されています.

ICCでは,2021年12月21日にウェブ版カードを使ったオンラインワークショップを開催しましたが,今回はカードをふだんから活用している8名のみなさんと,カードを制作したNTTコミュニケーション科学基礎研究所の渡邊淳司さん,村田藍子さん,駒﨑掲さんをお迎えし,ユーザーミーティングと題してウェルビーイングカードの活用方法についてのオンライン意見交換会を行ないました.

集まった参加者の簡単な自己紹介の後,「わたしたちのウェルビーイングカード」を制作した経緯やその設計について,渡邊さんや村田さんより解説されました.その中で,ウェルビーイングとは瞬間的なものではなく,人それぞれに固有であり,自律して持続し更新されていく状態であることという,渡邊さんのウェルビーイングの捉え方も紹介されました.

ウェルビーイングカードは,1300名の大学生に「ウェルビーイングなとき」を挙げてもらい,その答えを関わりの範囲によって「I(自分個人のこと)」,「WE(特定の誰かとの関わり)」,「SOCIETY(不特定多数の人との関わり)」,「UNIVERSE(より大きな世界との関わり)」の4つのカテゴリに分け,似たような要因を整理分類していき,現在の27枚のカードになったそうです.

ウェルビーイングカードを使った実践例としては,3つのタイプが紹介されました.

●ウェルビーイングを知り,共同行為モデルをつくる=自分で3枚を選ぶ

<小学校5年生のワークショップ例>
ウェルビーイングカードから「自分が幸せを感じられるとき」を1人3枚選び,グループのメンバーに伝える.次に,なるべくグループの全員が選んだそれぞれのウェルビーイングが満たされる休日プランを考える.各々のウェルビーイングをお互いに知ることで,「わたしたちの」ウェルビーイングを考えるきっかけを作る.

<フェンシング全日本選手権の例>*1
アスリートが,ウェルビーイングカードを3枚選んで可視化することで,見ている人の共感を促進する.

●日々の方向付けと把握,自分との出会いのために=偶然に任せて3枚を引く

朝に無作為に3枚のカードを引き,そこに書かれた内容に意識を向けて1日を過ごす.自分の考え方に気づくきっかけになる使い方.おみくじやタロットカードのような遊びの要素も.

ICC キッズ・プログラム 2021「チューンナップ じぶんをととのえる」展で行なったワークショップや,ハイパーICCで公開されているオンライン版もこのタイプにあたるといえます.

●ウェルビーイング視点で体験の評価を行なう

食事をしているときにどんなウェルビーイングを感じているか要因を考え,食に関する体験を考察する.

アート作品をみた感想や作品から受けた印象など,言語化しづらいことをカードを頼りに語る.

ほかにも,まちづくりやチームビルディングでもウェルビーイングカードを使って活動をしている例も紹介されました.

これらの実践例を伺うと,ウェルビーイングという切り口で,身の回りの様々なことへ視線を向けることができると言えそうだと感じました.

カードの制作者である渡邊さんからのお話の後,会の後半では,積極的にカードを活用しているという参加者のみなさんより,日頃のカードの使い方についてお聞きしました.

TRF(寅さんランニングフレンズ)の皆さんは,毎日ハイパーICC内のウェブ版ウェルビーイングカードを3枚引いてシェアし,夕方に1日の過ごし方を振り返る,という活動を継続しているそうです.1人では続けることが難しいところを「部活」のようなコミュニティを作り,仲間と一緒に取り組むことで続けられているとのこと.ここでも「体験の共有」がキーワードになっているようです.

さらに,個人ではどのような利用をしているのかをお聞きしました.

・マインドフルネスの実践として,カードを引きそれを意識して毎日を過ごすことをSNSで発信している
・ワークショップで3枚引いてもらい,自身の行動に結びつけてもらって対話をした
・毎日引いたカードを手帳に記録している
・web版に掲載されている言葉を考えるヒントとしてカードに書いている
・カードの言葉に意識を向けていくとポジティブな気持ちになれて,やりたいことを行動に移せるようになった

SNSで発信

 

web版に掲載されているヒントを書き写したカード

使う中で感じた良い点として,

・使い方の自由度が高い
・カードをきっかけに自分のことを話しやすくなる
・ネガティブな言葉が含まれていないので,どう受け取っても前向きになる
・好きなカードを引いて自分の価値観を示すこともできるし,偶然を楽しむこともできる
・前向きで広がりのある言葉なので,自分にプラスになるさまざまな解釈ができる

などが挙げられました.

さらに発展的に使おうとする観点からは,

・ウェブ版で引いた3枚のカードをシェアできる機能があるとよい
・ウェブ版で引いたカードのログを残すことができると,そこから振り返りができる
・カードを引いてもらうまでの導入が難しいので,ポイントまとめたガイドがあるとよい
・ウェルビーイングやウェルビーイングカードについて,基本的な情報が掲載されているとよい
・ウェブ版に掲載されているヒントが実物のカードにも書かれていると考える手助けになる

といった改善ポイントが挙げられ,ICCスタッフも参考になることが多くありました.特にSNSでシェアできるボタンがあるといいという声が多く聞かれ,共有しながら体験することへの期待感が大きいと感じました.

また,カードの大きさについても言及され,ポストカードより少し小さいくらいの大きさになった経緯として,カード自体の物理的な重さや質感,手に取ったときの身体感覚も考慮されていることを渡邊さんや駒﨑さんからお話いただきました.

小学校教諭のTさんは,クラスの活動としてウェブ版ウェルビーイングカードを活用されているそうです.

それぞれが自分のタブレット端末上で好きなカードを1枚選び,ペアの子に見せながらインタビューし合います.選ぶものは一人ひとり違ったり,同じカードを選んでいても理由が異なったりします.クラスの一人ひとりが幸せと感じることは違うと知る体験を,クラス作りに活かしているそうです.5年生の子どもたちには理解しづらい言葉もあるようですが,カードと一緒に掲載しているイラストやヒントを見ながら考えているとのこと.子どもたちはお互いに共感し合いながら話し合いを楽しんでいるそうです.

実践例の中で紹介された研究所が行なったワークショップではイラストが誘導的になった面があったようですが,身近な場面のイラストは子どもたちへの理解を促すには有効のようです.

2歳のお子さんとカードを引いておしゃべりをしているというYさんからは,カードに書かれた内容を子どもが理解できる単語で説明するのが難しいと感想を伺いましたが,小さな子どもにも馴染みのある言葉に言い換えると理解して一緒に楽しんでくれているそうです.ウェルビーイングという概念は理解できなくても,身近な幸せや心地よさを「いいな」と思う気持ちは誰もが持っているものだと感じます.

今回,実物のカードに加えてウェブ版のカードを制作しましたが,遠方にお住まいでリアル会場に来館しづらい方にもカードが活用されていたのは嬉しいことでした.継続してウェルビーイングカードを活用していくとどのような変化があるのか,さまざまな使い方の今後の展開も楽しみになりました.ICCでも引き続き,カードの活用について検討していきたいと思います.

展示は会期終了しましたが,ウェブ版のわたしたちのウェルビーイングカードの公開は継続していますので,ぜひカードを引いてみてください.多くの方に活用していただければと思います.


*1 ^ NTTコミュニケーション科学基礎研究所西日本グループが「全日本フェンシング選手権」をICTでサポートし,新しい時代の「新しい競技スポーツ大会」の実現にチャレンジするプロジェクト「Fencing Next Era Challenge」の詳細はこちら



[K.N.]