チャンネルICC
「チャンネルICC」内のポッドキャスト・サーヴィスでは,「オープン・スペース 2019 別の見方で」出品作家のシンスンベク・キムヨンフンのインタヴューを公開しています.今回は,インタヴュー内容の抄訳をご紹介します.
「オープン・スペース 2019 別の見方で」出品作家インタヴュー
シンスンベク・キムヨンフン
こんにちは,シン・スンベクとキム・ヨンフンと申します.私たちはシンスンベク・キムヨンフンというチームで活動し,「テクノロジーと人間の間のインタラクション」をテーマとしてコラボレーションを行なっています.
ICCでは私たちの作品の一つ,《ノンフェイシャル・ポートレイト》を展示しています.この作品は昨年2018年に韓国で制作しました.画家の方たちに参加してもらい,私キム・ヨンフンの写真を元に肖像画を描いてもらうようにお願いしたのです.そして彼らには,完成した肖像画に描かれた顔がAI(人工知能)によって顔として検出されてはいけない,というルールに従ってもらいました.そのため私たちは画家の机にウェブカメラを設置し,画家が肖像画を描いている間,ウェブカメラがそのキャンバスを捉えるようにしました.そしてモニターも設置することで絵から顔が検出されているかどうかを確認できるようにしました.
顔を検出するために3つの異なるアルゴリズムを使用しました.ウェブカメラが肖像画から顔を検出すると,その領域にそれぞれ異なる色(赤,緑,青)で四角が表示されます.画家の方たちはAIからのそうしたフィードバックを参考にしながら肖像画を描き進めていきます.
そして完成したその肖像画の顔は3つのアルゴリズムのいずれにも検出されてはいけません.その課題はシンプルではありますが,厄介だと言えます.もし画家が肖像画をモデルに似せて描いてしまうと,AIは簡単にその顔を検出してしまいます.そしてもし画家の方がその顔を歪め過ぎてしまうと,その絵は人の肖像画であると捉えることはできなくなります.
ICCでのこの展示のために,私たちは日本の作家の方々とともにワークショップを行ないました.そして彼らにその同じ課題を達成してもらうようにお願いをし,その日本の作家の皆さんが描いた8枚の絵と,2018年に韓国で描いてもらった2枚の絵を展示で見せています.
ICCでのワークショップの様子
AIが人間の能力のほとんどを真似しているために,近頃は人類の独創性がAIと関連づけてとてもよく議論されています.そこで私たちは,AIに真似できない人類の独創性とは何だろうと疑問をもちました.我々はそれを持っているのでしょうか.このプロジェクトはその疑問を探求するための実験でした.
もし画家がこの課題をうまく達成することができるなら,完成した絵は人類の独自性を表わすことになるでしょう.そしてもしこれがうまくいかなければ,我々がたった今直面している困難な状況を提示することになるでしょう.
AIは,この展示でお見せしている完成した絵の中に顔を見つけることはほとんどできませんでしたが,人間ならば,これらの絵があるモデルを描いた肖像画だと認めることもあるでしょう.なかにはとても抽象的な絵もありますから,肖像画だといっても同意できない人もいるでしょう.というわけで,画家の方々がこのタスクをクリアできたのかどうかは鑑賞されるみなさんの判断にかかっているわけです.
現在私たちは,3Dプリンティングの技術とコンピュータ・ヴィジョン* を組み合わせて実験を行なっています.また同時に脳の信号解析とAIを用いる案もあります.私たちはいくつかのテストを行ないながら,さらに実践を続けること,そして自らの作品によって驚きを得ることを望んでいます.また見た人が驚くことも.
* コンピュータが画像や動画を取り込み,そこから必要な情報を正確に読み取るための技術や研究のこと.
オープン・スペース 2019 別の見方で
会期:2019年5月18日(土)—2020年3月1日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
開館時間:午前11時—午後6時
休館日:月曜日(月曜日が祝日もしくは振替休日の場合翌日),保守点検日(8/4,2/9),年末年始(12/28–1/6)
入場無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC](東日本電信電話株式会社)
[M.A.]