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トリスタン・ペリッチのインタヴュー抄訳

2018年11月28日 20:30

「チャンネルICC」内のポッドキャスト・サーヴィスでは,「オープン・スペース 2018 イン・トランジション」出品作家のトリスタン・ペリッチのインタヴューを公開しています.今回は,インタヴュー内容の抄訳をご紹介します.


「オープン・スペース 2018 イン・トランジション」出品作家インタヴュー
トリスタン・ペリッチ


ICCの「オープン・スペース 2018」で新作《トーン・パターン・スタディ#1》を展示しているトリスタン・ペリッチです.30個の剥き出しのスピーカー・コーンが,1ビットの音を合成する回路基板に繋がれている作品です.

この作品は簡単に言えば,無響室で30の断片的な旋律が奏でられるインスタレーションです.作品が設置されている無響室という部屋は,音の反響がなくなるように設計されています.その事実に興味を抱きました.つまり無響室の中は,音が非常にデッドな状態になります.この部屋は非常に静かで反響音もなく,音楽を再生するとヘッドフォンで聴いているような状態になります.空間固有の音が存在しないからです.

そこで,全ての音がはっきり鳴るマルチチャンネルの作品を制作したいと思い,30チャンネルになりました.1 ビットの音色それぞれがとても鮮明でした.この音の断片自体は,わずかに変化しています.それぞれのスピーカーは全く同じ高さの音を出しているのですが,スピーカー同士が音を少しだけ相殺することがあります.なので,音が揃うこともあれば,ぶつかることもあるわけです.

この構成はとてもとても単純なので,作曲したとまでは言えません.作曲作品のような,ちょっとした音楽のアイデアのようなものです.無響室の中に音を鳴らすスピーカーを設置しただけですから.この展覧会のために制作したこの新作は基本的に,〈トーン・パターン・スタディ〉シリーズの始まりであり,今までと同様のアイデアに基づき取り組んできた音楽作品でもあります.この作品は,これまで私が取り組んできたインスタレーションや音楽アルバム,そしてヴィジュアル・アート作品から生まれたものです.

そこで私が考えていたのは音の基盤,基礎といったようなことです.スピーカー・アレイで微分音を出したり,また非常に多くのスピーカーが同時に別々の音を鳴らした結果として聞こえるホワイトノイズと微分音との関係を探求したりしてきました.今回の作品にも同じような構造がありますが,ここでの音は旋律のようなものを奏でており,科学的な要素はほんの少しだけ減っています.しかし全ては私の1ビット音への関心から生まれています.1ビット音こそ私がここのところ取り組んできた,自作の回路基板にプログラムしたコードで合成した実に基本的な音なのです.この1ビット音は,私が回路基板という形態でリリースしてきた《1ビット・シンフォニー》や《ノイズ・パターンズ》,といったアルバムと同じように,単純な電気パルスのオン・オフ,つまり1と0という情報で構成されたバイナリで制御されています.今回の作品も同じやり方で出力されており,ソフトウェアも非常に似ています.どれも回路基板でプログラムを走らせることによって音を生成しています.


オープン・スペース 2018 イン・トランジション
会期:2018年6月2日(土)—2019年3月10日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
開館時間:午前11時—午後6時
休館日:月曜日(月曜が,祝日もしくは振替休日の場合翌日.ただし2/11[月]は休館,2/12[火]は開館),保守点検日(2/10),年末年始(12/28-1/4)
入場無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

[T.R.]