ICC
ライト・[イン]サイト—拡張する光、変容する知覚
《カプリ・バッテリー》写真提供:国立国際美術館
撮影:福永一夫
《カプリ・バッテリー》1985年
ヨーゼフ・ボイス
黄色く塗られた白熱電球にレモンをソケットによりつなぐことで,光エネルギーを理念的に提示したオブジェ作品.レモンの酸性成分が微弱な電流を発生させ,バッテリーとして電球に光が与えられる.電球の表面からは見えないものの,エネルギーとしての「光」がそこに発生していることを,観客は想像的に体験することになる.太陽光を浴びて育ちながら,劣化の途上にある果物・レモンと電球とのカップリングは,組み合わせの意外性や生々しさとともに,生ものと人工物という違いを超えて変換され移動する,エネルギーの存在を印象づける.ボイス最晩年の作品のひとつ.「カプリ」は,レモンの生産で有名なイタリア,ナポリの近くの島.国立国際美術館収蔵作品.ヨーゼフ・ボイス1921年ドイツ,クレーフェ生まれ.1986年デュッセルドルフ没.ゲーテやルドルフ・シュタイナーの理念を引き継ぐアーティストとして,50年代よりドローイング,彫刻,オブジェ,インスタレーションなど幅広い活動を展開.熱をはじめ,様々なエネルギーの流動をベースとした世界観で,生ものや不安定なものを素材とした作品を制作.また「社会彫刻」という彼の提唱した概念に代表されるように,経済や環境を含め,広く社会のあり方の変容を推進する活動を行なった.日本では1984年に西武美術館にて大規模な個展を開催.