 |
© Rudolph Burkhardt |
 |
写真:高山幸三 |
|
|
本作品が発表された1966年は,ウォーホルらのサイケデリックなパフォーマンスがニューヨーカーをダウンタウンに引き寄せていた時期であったが,彼は,今度は反対側のアップタウン(レオ・キャステリ画廊)の個展で発表したのだった.入って正面の部屋には,数ダースのヘリウムを詰められた銀色のバルーンで占められ,もう一つの部屋は,ピンクの牝牛の頭部が反復する壁紙のみ.バルーンは,90センチから120センチ位の高さで舞いながら,その光る表面に周囲の空間を歪めながら映していた.一群は気流や室温変化や静電気に影響されて終わりなく動き回る.限定されない動きや重力への抵抗は,60年代のキネティック・アートやカルダ−のモビールと関係し,ぷっくりとした形や柔軟さはオルデンバーグの「ソフト・スカルプチャー」とも近い.観客は浮遊している様を見るために軽く触れるよう誘われるが,この雲の誘惑は「観客参加」のアフォーダンスとなる.ふわふわ浮き,ランダムに動く雲に魅力を感じたマース・カニングハムは,《レインフォレスト》(1968年)で,浮き上がる舞台装飾として使用した.予想以上の気ままな雲の動き.舞台の外へ去って行ってしまわないように,結局,雲はひもでつながれてしまった[*]. [上神田敬]
*──David Bourdon, Warhol (New York: Harry N. Abrams, 1989), pp.229-233 ■本作品制作にまつわるアンディ・ウォーホルとクルーヴァーとのコラボレーションの経緯については,「E.A.T.の歩み07番」(本カタログ28頁)を参照.
|