さまざまな情報が相互に連結(コネクティング)していく
ネットワークの時代において開かれる
コミュニケーションの創造的地平へ,ようこそ
「コミュニケーション」,それは生命体が生存しまた共存していくための必要不可欠な要素です.とりわけ人間は言語や文字をもつことで,オーラルコミュニケーションから遠隔通信まで,各時代において技術やメディアを更新しながらメッセージをやりとりしてきました.コミュニケーションによって人間は新たな社会や共同体を形成し,文明や文化を発展させてきたといえるでしょう.電信電話の登場を皮切りにグローバルなコミュニケーションが開かれた前世紀を経て,ここ10年のコンピュータやネットワーク技術の飛躍的な発達により,コミュニケーションはますます多様なものとなり始めています.
現在わたしたちは,さまざまな情報端末やシステムを日常的に使い分けてコミュニケーションを行なっています.そこでの「コミュニケーション」とは,人と人との間の自覚的なものだけでなく,アナログ/デジタルの対立を超えて人と機械,モノ,生体など多様な事象が自動的に連結(コネクティング)されていくものといえます.そのプロセスにおいて各人のふるまいがネットワーク化され,情報が組織化され共有されていきますが,情報が一定の方向性をもって編纂されることで,かえって閉鎖的な回路を生み出してしまう危険性もはらんでいます.コミュニケーションをいかに多様に, そしてオープンにしていけるかが,社会において切実な課題となっているのです.
ICCリニューアルオープン後初の企画展となる本展は,現在わたしたちが直面しているコミュニケーションの諸相に対して,アートやプログラミングの視点からオルターナティヴな可能性を提示するものです.音,ゲーム,インターネットなどのメディアを駆使し,現代の政治,経済,身体,都市環境,ネットワークへとユニークな介入を試みる表現を中心に,過去の先見的な作品も紹介します.訪れた人々は,異なるメディアやコードが「コネクティング」されていく世界において,情報のずれやノイズが創造的に転換され,新たな情報形態として出現するプロセスを目撃するだけでなく,自らその一部として関わることになるでしょう.