アーティストの森脇裕之氏をリーダーに,「僕とコンピュータ」について考えるワークショップ.コンピュータ文化に深くかかわっている専門家へのインタヴュー(ユーザーズグループJUGの発足人西田雅昭氏,アーティストの岩井俊雄氏)や,コンピュータの解体,ハンダ付けなどを行なってその構造を知る公開講座,さらにオリジナル・コンピュータを作る制作ワークショップなどを通して,自分とコンピュータとのかかわりを問い直し,コンピュータとは何かを考えていった.これらはつねにICCnet(BBS:電子掲示板)とインターネットによって参加者同士のコミュニケーションがはかられ,そのプロセスも公開された.オリジナル・コンピュータの制作では,公開講座の参加者を中心に,ICCnetの会議室とオフラインでの意見交換などによって構想が練られていった.基本的なパーツを組み立ててできるパソコンではなく,人間がアクションを起こすことで反応するコンピュータをつくろうとした結果,「人力によるコンピュータ」が考案された.名前は「王様のドライブ」.「王様のドライブ」とは,人力車に乗った「王様」に脈拍測定器とIBVA(脳波検出装置)を装着し,王様の心理的変化をコンピュータを通して「車夫」にフィードバックすることを通じて,コンピュータのしくみを体感するものであった.
『ICCコンセプト・ブック』(NTT出版,1997)より引用