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チャンネルICC

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イヴェント・レポート スタッフ・ノート

ICCスタッフによるワークショップ「私だけのコンパスと地図」

2025年10月14日 17:00

8月10日と9月14日,小学校3—6年生を対象に,ICC キッズ・プログラム 2025「みくすとりありてぃーず——まよいの森とキミのコンパス」を“自分のペースで深く味わう”ための関連イヴェント「私だけのコンパスと地図」を実施しました.会期中に配布していたオリジナル・ワークシート「本のふりをした地図,地図のふりをした本」を手がかりに,参加者それぞれの感じ方を言葉にし,確かめ合う時間になりました.


このワークシートは,この展覧会のために制作したものです.中心となる考え方は「コンパス=自分の気もちの動きを知るヒント」.作品を見て「おっ!」と驚いた瞬間や,「ん?」と考え込んだ瞬間をその場で書き留めていくと,自分は何に反応しやすいのかが少しずつ見えてきます.

ワークシートは二部構成です.冊子のまま使うときは「本SIDE」,紙を大きく開いて裏返すと「地図SIDE」.本SIDEでは,感じたことを短い言葉や丸印で素早く記録できます.地図SIDEには会場の白地図が印刷されており,自分のルートや発見を書き足して“自分だけの地図”に育てていく設計です.今回のワークショップでは主に本SIDEを用いて,心に残ったこと・引っかかったことを見つけ,言語化していきました.

 

イヴェントの導入では,本SIDEの1ページ目で小さな練習から始めました.「今日ここに来るまでに,気になったものはどれ?」という問いに,参加者は番号を一つ選び,思い出したことを一言メモします.天気のこと,道の途中で耳に残った音,今の体のコンディション——出てくる話題はさまざまですが,「自分で気になることを見つけられた」という手応えや,「他の人はそんなところに目が向いたんだ」という発見が,その後の集中を支えてくれたように感じました.

 

続く鑑賞の時間は,ワークシートを片手に会場をめぐり,見つけた作品に「見た」のチェックを入れ,作品とつながりそうなキーワード(例:音/動き/重なる/リアル/バーチャル)に丸を付けていきます.これらのキーワードでは足りないと感じた参加者は,余白に自分の言葉やイラストも追加.言葉を選ぶ/増やすという行為そのものが,その人のコンパスを確かめる時間になっていました.

 

 
 

最後は短いふりかえりです.一人ひとりが作品を一つ選び,作品名とえらんだキーワード(できれば理由もひと言)をみんなに向けて伝えてもらいました.スタッフは聞き役に回り,言葉を引き出しながら,感じ方の違いをその場で確かめ合いました.最初は「音」「明るい」といったおおまかな言い方だった参加者が,終盤には「近い音/遠い音」「自分の音/だれかの音」といった表現に更新していく姿や,一般的な印象から一歩進んで「自分はどう思うか」という自分ごとの視点で語る姿が見られ,自身の視点に少しずつ自覚的になっていく過程が印象的でした.

 

 
 

ご参加くださった皆さま,ありがとうございました.展覧会は終了しましたが,日々の生活のなかでも「おっ!」「ん?」を合図に,自分だけの地図を描くように世界を見てみる——.今回の展覧会とワークシート,そしてこのワークショップの試みが,その小さなきっかけになっていれば幸いです.



[K.K]