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名古屋市立大学の小鷹研究室から小鷹研理さんと佐藤優太郎さんらをお迎えし,8月13日に「即錯即席ワークショップ」を開催しました.
小鷹研究室はVRをはじめとする新たなメディア空間における新しい「からだ」のかたち/イメージを模索し,身体の所有感や伸縮感覚をを変調させるさまざまな「からだの錯覚」を発表しています.今回のワークショップではそうした小鷹研究室オリジナルの「からだの錯覚」をいくつか紹介していきました.
参加者のみなさんには20分程でレクチャーを交えながら身体の一部を使った即席でできる錯覚を体験していただき,その後希望される方には道具を使った錯覚も体験していただきます.今回は2人1組になり身体に触れ合う体験を含むため,新型コロナウイルス感染拡大防止策として同居するご家族での参加を推奨しました.また人数制限をしながらより多くの方にご参加いただけるよう,1回5組までとし同日に複数回開催しました.
はじめに参加者には紙の資料が配られ,「からだの錯覚」を体験して「全く感じない」から「大変強く感じる」の7段階で自分の錯覚感度を評価していきながら体験を進めていきます.
自分が錯覚を感じやすいのかどうかを探る導入のエクササイズとして,《トントンスワップ》と《ダブルスクラッチ》という手を使った錯覚から始めていきます.これらは身体の所有感が変調する感覚を得られる錯覚で,うまくいくと相手の手を触っているはずが段々と自分の手を触っているように感じられてきます.
どちらも目をつぶりながら30秒程度同じ動作を繰り返して行なうのですが,みなさんはじめは黙々と感覚の変化に集中し,錯覚を感じられると「キタ!」「分かったかも!」と報告し合ったり,不思議な感覚から思わず笑ってしまったりする様子が見られました.
《トントンスワップ》
《ダブルスクラッチ》
「からだの錯覚」の感じやすさには個人差があり,特に年齢で差が出やすい傾向にあるそうです.多くの場合,子供の方が錯覚を感じやすく20代以上になると感じにくくなることが,これまで小鷹研究室が行なった実験からわかってきています.
今回のワークショップは親子で参加された方が多く,やはり同様の傾向が見られました.
年齢が錯覚感度に及ぼす影響として,想像力や共感性の強さが関わっているのではないかと小鷹さんたちは考えているそうです.子供の方が自分の体が伸びたり柔らかくなったりすることを想像し,リアリティを持って受け入れることができるのかもしれません.
他にも手を交差することで左右の感覚が混同してしまう《ととんの錯覚》や,オプションとして用意されていた道具を使った数種類の「からだの錯覚」も参加されたほとんどの方に体験していただき,さまざまなヴァリエーションの錯覚を体験していただくことができました.
《ととんの錯覚》
ゲームに発展させた《蟹の錯覚》の装置
《軟体生物ハンド》
《サッカーボールヘッド・イリュージョン》
《ボディジェクトの指》
《質量ゼロのガムテープを転がす》
参加された方の中にははっきりと錯覚を感じられない様子の方もいましたが,錯覚する瞬間を探ったりイメージをふくらませたり,感覚の変化に意識を集中させること自体を新鮮に感じながらみなさん楽しまれている様子でした.
また誰かと共同作業をして同じ感覚を得ようとすることで,日頃感じられない一体感も得ることができたのではないでしょうか.熱気を帯びた良い雰囲気のイヴェントとなりました.
今回開催したワークショップで紹介したものを含め,23種類の「からだの錯覚」のレシピが載っているブックレット『即錯23』が小鷹研究室とNADiffそれぞれのオンラインストアと東京オペラシティ3階のミュージアムショップ「ギャラリー5」でお買い求めいただけます.
また,ICC キッズ・プログラム 2021「チューンナップ じぶんをととのえる」オンライン展示のアーカイヴでも『即錯23』に掲載された錯覚を紹介しています.どれもお家で簡単に体験していただけるので,身近な方とぜひ試してみてください.