チャンネルICC
時里充さんと小林椋さんによるユニット 正直と臼井達也さんによるパフォーマンスを8月3日,21日に配信しました.1回目はアーティスト3名がそれぞれ,山口,京都,東京から個別に配信する形式で,視聴者は3つの窓の中をのぞきこむようにも見える画面をスクロールしながら,鑑賞することとなりました.
互いの音を探りつつ,黙々と音風景を約30分にわたって作り出すこのパフォーマンスの記録映像は,8月7日からスタートしたリアル会場での展示室で,映像から抜き出したようにも見えるインスタレーション《KB3rd》の一部として展示されました.
3名それぞれが色とりどりの養生テープや梱包材をモーターに巻き取らせたり引っ張ったりすることで発生する音や,「テープは使うぶんだけ引き出して貼る」という学校やご家庭での日常的なルールとは全く違う使い方を大人がしている様子を,モニターの間を行き来しながら楽しげに眺めるお子さんたちが見せる反応は,キッズ・プログラムならではの光景です.
8月21日のパフォーマンスは,開催中の展覧会のリアル会場から中継を行なうため,前日閉館後から展示室に複数のカメラや中継機材をセットしてスタッフは中継準備を行ない,迎えた当日,リアル会場では,臼井達也さん,正直の代行として小池奈緒さん,花形槙さんが出演します.
開始前からご家族連れも集まりはじめ,しだいに展示室が期待感に包まれ,観客の視線が集まります.会場内のアナウンスもなくいつの間にかパフォーマンスは始まります.

花形槙

臼井達也

小池奈緒

通常の展示時にはモーターは停止した状態でご覧いただくのですが,この日はモーターが動き,パフォーマーによって巻きつけられるさまざまな素材を4台のモニターがからめとり,真っ白な展示台の上や周辺にわき上がる雲のように素材を動かしていきます.ステージや客席の境目がなく,パフォーマーのすぐそばまで近づくこともできる場所で,3人のパフォーマーが全身を使ってテープを引っ張り,素材から音を引き出そうとする姿に釘付けになる観客の皆さんの表情が印象的でした.お子さんたちは背中をかがめてパフォーマーの後ろをこっそりついていく素振りを見せたり,梱包材がモーターに巻き込まれて破裂する音に最初はびっくりしつつ,耳をふさぎながらも,次の破裂するタイミングを明らかにワクワクしながら待っている様子も微笑ましいものでした.
メディア・アートの特徴として挙げられる特徴のひとつとして,技術やモノを本来の用途と異なる形で用いて表現に活かすということがよく挙げられます.このパフォーマンスでもテープやモーターが本来の用途ではなく,表現の要素として用いられていることもまた「メディア・アート的」といえるのではないでしょうか.正直のおふたりのパフォーマンスは,2019年のアルス・エレクトロニカ デジタル・ミュージック&サウンド・アート部門でオノラリー・メンションを受賞しています.

時里充

小林椋
ICC キッズ・プログラム 2021「チューンナップ じぶんをととのえる」オンライン展会場ではアーカイヴとして,8月3日開催分の記録映像が公開されています.(8月21日開催分の公開は決まりしだい,SNSなどでお知らせします.)見逃してしまった方,もう一度ご覧になりたい方もぜひオンライン展会場にもアクセスしてみてください.
[A.E.]