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「多層世界の中のもうひとつのミュージアム——ハイパーICCへようこそ」展 展覧会レポート(7)

2021年6月10日 17:00

2021年1月よりオンライン展示とリアル会場での展示を並行して開催した本展で,出品作家としてだけでなく,共同キュレーション,「ハイパーICC」の制作,「Aguyoshi AR」の制作にも関わられたのが谷口暁彦さんです.


1月16日より公開されたオンライン展示のメイン会場のひとつとなった「ハイパーICC」では,《ヴァーチュアル・フォトグラフィ/ヴァーチュアル自撮り》*1 が「展示」されました.ICC館内で実測された3Dデータに基づいて表現されるこの空間では,鑑賞者は展示室への移動はもちろん,360度視点を動かすことが可能です.この作品は展示空間内にモノとしての作品が展示されているのではなく,アヴァターのもつスマートフォンのカメラを切り替えて撮影したり,鑑賞者のコンピュータのカメラを利用した撮影ができるので,展覧会を訪れて記念撮影をする「体験」をすることになります.そこでは作品や登場するアヴァターの至近距離まで近づいて撮影したり,また,作品内部に入り込んで鑑賞しながら撮影することもできます.つまり,リアル展示空間では実現できない視点で展示室の外にまで続く空間に移動して作品を鑑賞し,それを「画像」として展覧会の記念を手元にデータで残すことができます.さらに,鑑賞しているコンピュータのカメラでの「ヴァーチュアル自撮り」もできるのです.ヴァーチュアル空間の中のスマートフォンにリアルな鑑賞者自身が入り込む鑑賞方法も,リアルとヴァーチュアル双方で楽しむことができるこの展覧会ならではの体験と言えるかもしれません.

 

鑑賞者はエントランス・ロビーから階段を上がり,ギャラリーAに向かいます.ギャラリーAに入っていくと,展示室中央に展覧会ロゴが空間に浮かんでいます.視点を移動し足元を見ると靴や人物の影が見え,「自撮りモード」に切り替えて撮影してみると鑑賞者自身は谷口さんのアヴァターになって空間内に存在していることが分かります.

 

ロゴの手前に白い展示台が一つ置かれ,「自撮りモード」に切り替えると《たにぐち部長の美術部3D in ハイパーICC》に登場するキャラクター「部長」と「ひろし」の二人が現われます.*2 さらに展示台に近づくと,これまで鑑賞者の視点として存在していたはずの谷口さんのアヴァターが展示台奥に現われ,《たにぐち部長の美術部3D in ハイパーICC》の表紙が画面に表示され,閲覧が可能になります.

今回のストーリーも谷口さんならではの論考が「たにぐち部長」から語られます.彼らがレポートを提出するためにヴァーチュアル空間について考察する中で,この展覧会をより理解するだけでなく,美術史上でも重要なキーワードが次々に出てきます.

 

2015年に開催したICC キッズ・プログラム「しくみのひみつ アイデアのかたち」展で出品された《たにぐち部長の美術部3D—メディア・アート編—》は,博物館や科学館でよく見られるハンズオンの展示手法も部分的に用いたインスタレーションで,メディア・アートの代表的な作品を紹介し,作品のしくみやテーマの由来を,展覧会の主な来場者であるこどもたちに知ってもらいたいという意図をもってこの展覧会のために制作されました.この展示の一環として展示されたのが,学習マンガの体裁をとった『マンガでよむ たにぐち部長の美術部3D—メディア・アート編—』でした.会場では冊子として展示され,また谷口さんのウェブサイト上でも公開され,こどもたちの人気はもちろんですが,一緒に来場された保護者のみなさんからも好評をいただきました.この展示に際して開催した谷口さんのアーティスト・トークの記録映像は映像アーカイヴ HIVEで公開していますので,こちらもぜひご覧ください.

 

 

《たにぐち部長の美術部3D—メディア・アート編—》2015年 撮影:木奥恵三

新作での登場人物紹介では,部長とひろしは美術大学進学をめざす美術部員の高校生のままですが,顧問の先生だけはリアルな時間の分だけ年齢を重ねています.会期が終了しアプリケーション「ハイパーICC」の配布終了後もブラウザ上ツアーで公開を継続していますので,楽しんでいただければと思います.

「ハイパーICC」「ヴァーチュアル初台」は,ICCの新たなプラットフォームとして今後も展開されていく予定ですので,どうぞご期待ください.


*1 ^「ヴァーチュアル自撮り」は,2021年2月4日配布開始された「ハイパーICC」の更新版(Ver. 1.1)で機能追加されました.

*2 ^《谷口部長の美術部3D in ハイパーICC》は,2021年3月30日配布開始された「ハイパーICC」の更新版(Ver. 1.3)で追加されました.

[A.E.]