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スタッフ・ノート

ライフパッチ《ブラ(Burak)》

2016年12月 1日 17:30

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11月1日から展示中のライフパッチ「ルマ(家)とハラマン(庭)」では,ライフパッチのメンバーが制作したヴィデオ・ドキュメンタリーをご覧いただけます.そのなかから,今日は《ブラ(Burak)──伝統的発酵飲料について》をご紹介します.


《ブラ(Burak)──伝統的発酵飲料について》は,ライフパッチの拠点でもあるジョグジャカルタで,伝統的製法によるアルコール飲料生産に携わるマテウス・グナワン氏へのインタヴューです.以下は,ライフパッチによる解説の和訳です.


インドネシアでアルコール飲料を入手したり販売許可を取ることは難しいのですが,その制限は合法のアルコール飲料に対してだけではありません.伝統的なアルコール飲料における状況は,それよりはるかに深刻です.1997年の規制で,地方自治体がその土地の習慣や文化に応じて判断する特別な許可を得ずに,伝統的アルコール飲料を製造することは禁止されるようになりました.この規制によって,インドネシア固有の伝統的アルコール飲料の製造は止まってしまいました.インドネシアでは,さまざまな地域や文化において多くのアルコール飲料──ブルム(brem),トゥア(tuak),アラ(arak),チウ(ciu),ラーペン(lapen),サグエル(sagoer),ソーピ(sopi)など──が伝統的に作られてきました.現在のインドネシア,特に都市部では,これらの伝統的アルコール飲料を作る許可を得るのは非常に困難ですが,一方で,伝統的なアルコール飲料がおおっぴらに売られている地域もわずかですがあります.

こういったアルコール飲料は,何世代にもわたって受け継がれてきた伝統的な発酵方法によって作られており,その風味や特徴は各地域で採れる天然原料によって異なります.インドネシアの地理的条件や地域ごとの文化の違いによって,さまざまなアルコール飲料が生まれてきました.残念ながら,必要な許可を得るのが困難なこと,また重税や複雑な官僚制度を理由として,こういったユニークな伝統飲料は,それぞれ特定の地域でしか見られなくなり,しばしば違法に販売され,国内市場では大企業がもつビールやワインのブランドと競合すべくもありません.

本映像は,インドネシアのアルコール飲料をテーマにしたヴィデオ・ドキュメンタリーです.タイトルの「ブラ(Burak)」はボルネオ東部発祥の飲み物で,伝統的製法でもち米を発酵させて作ります.この種の飲み物はトゥア(ヤシ酒)としても知られています.一般的に,インドネシアのすべてのアルコール飲料はミヌマン・クラス(minuman keras),略してミラス(MIRAS)と呼ばれています.最近,新しく出てきた言葉としてオプロサン(oplosan)がありますが,それは,飲酒時の効果を高めるためにMIRASに「なんらかの化学的液体」を混合したものと定義されます.

このヴィデオ・ドキュメンタリーは,ジャワ島にあるジョグジャカルタで撮影されました.このなかでマテウス・グナワンは,インドネシアの社会および法律を背景とした伝統的な発酵飲料の位置付けについて語っています.一方では,グナワンは地域に伝わる知識を懸命に守ろうとしています.他方で,アルコール飲料は法律によって規制されています.グナワンは,政府にこの問題に対する解決策を見つけてほしいと思っています.

映像の最後でグナワンは,トゥアのファンに対して自分で発酵飲料を作るべきだと勧めています.トゥアは簡単に作れますし,このようなDIYアルコール飲料に関する知識を得ることで,人々は自分たちのコミュニティをよりコントロールする力を得るのです.


イスラム教徒の割合が全人口の7割以上を占めるインドネシアでは,アルコール飲料の製造および販売に対して,厳しい法的な規制が存在します.上の解説で言及されている1997年の規制だけでなく,2015年4月からは,小売店でのアルコール販売がインドネシア政府によって禁止されました.現在,小売店での販売規制に対しては反対意見も多く出てきているようですが,その背景には,アルコール入手が困難なことに起因すると推測される密造酒の横行と,それによる健康被害もあるとされています.「オプロサン」も密造酒を指す呼称のひとつです.規制の外で製造・販売されるために,なかにはメタノールなどの人体に有害な原料や添加物を含むオプロサンも出回っており,それによる失明や死亡事故も起こるなど,大きな社会問題となっています.

ライフパッチは発酵に関するワークショップを数多く行なっていますが,それは,伝統的製法によるアルコール飲料の作り方を一緒に学び,安全な作り方を共有することによって,このような問題に対抗する試みだといえます.このドキュメンタリーに登場するグナワン氏は,同様の問題意識をもちながら,それに生産者の立場で取り組んでいるのだといえるでしょう.

ドキュメンタリーはインドネシア語ですが,会場では日本語または英語の字幕つきでご覧いただけます.ぜひ会場にお越しください.


オープン・スペース 2016 メディア・コンシャス 連携プロジェクト「アジアのメディア・コンシャス」
ライフパッチ「ルマ(家)とハラマン(庭)」

会期:2016年11月1日(火)─2017年3月12日(日)

第一期:「ルマ(家):プライヴェートな空間を使用した集団的実践」
会期:2016年11月1日(火)―12月28日(水)
参加メンバー:ティンビル・ブディアルト,アグン・ゲゲール,ウィスヌ・ワゥイース
第二期:「ハラマン(庭):集団活動と戦略」
会期:2017年1月5日(木)―3月12日(日)
参加メンバー:アンドレアス・シアギャン,アダリ・ドノラ,ドリー・フサダ

会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
開館時間:午前11時─午後6時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合翌日),年末年始(12/29─1/4),保守点検日(2/12)
入場無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
共催:国際交流基金アジアセンター


[Y.Y.]