本サイトをご利用の際,最新版のFirefoxGoogle ChromeInternet ExplorerSafariなどを推奨しております.
現在ご利用のブラウザでは,レイアウトなどが崩れる可能性があります.

JA / EN

チャンネルICC

ブログ

現在進行形のプロジェクト, これまでの活動など,ICCに関するトピックを紹介していきます.

戻る

コンテンツ紹介 スタッフ・ノート

「オープン・スペース 2015」展について

2015年4月14日 20:00

os2015_20150413_01.jpg

藤幡正樹《未成熟なシンボル》2006年

5月23日(土)より,2015年度のICCの展示がはじまります.


先ごろ,2015年度のICCの活動スケジュール「オープン・スペース 2015」展の内容,企画展の内容が発表されました.


「オープン・スペース」は,2006年度より開始された,年度ごとに展示内容を更新する展覧会,ミニ・シアター,映像アーカイヴ「HIVE」(ハイヴ)を,入場無料で公開するものです.そして,今年度は10回目の「オープン・スペース」となります.
メディア・アート作品をはじめとした,現代のメディア環境における多様な表現を紹介する「オープン・スペース」展では,これまでに数多くのアーティストが参加し,メディア・アートを代表する歴史的な作品,同時代的な問題を扱う批評的な作品,先進的な技術と発想による教育機関におけるプロジェクトなどを紹介してきました.
かねてより,メディア・アートおよびICCの活動へのイントロダクションとして位置づけ,幅広い観客へ向けた展覧会として企画されてきた「オープン・スペース」展ですが,今年度の「オープン・スペース 2015」展もまた,より充実した内容を充分に楽しめる展示をめざして企画しました.



os2015_20150413_02.jpg
スズキユウリ《ガーデン・オブ・ルッソロ》2013年

os2015_20150413_03.jpg
城一裕《断片化された音楽》2014年


4階エントランスでは,ルイジ・ルッソロの騒音楽器「イントナルモーリ」を模した,スズキユウリの《ガーデン・オブ・ルッソロ》が,インタラクティヴに観客の声や周囲の音を変換し,応答します.
研究開発コーナーは,メディア考古学を足がかりにして,ありえたかもしれない「今」を作り出すという,情報科学芸術大学院大学 [IAMAS]の「車輪の再発明プロジェクト」を紹介します.
5階では,セミトランスペアレント・デザインが,画像変換アルゴリズムを用いて,撮影された映像に変換と復号という可逆操作を加え,ジョセフ・コスースの《1つと3つの椅子(One and Three Chairs)》を再構成し,さまざまなイメージを生成する新作を発表します.
これまでに制作してきた自動で駆動し即興的な描画を行なうドローイング装置のコンセプトをアップデートし,作家自身の肖像を描画する,菅野創+やんツーも新作による展示です.
藤幡正樹は,CGやヴィデオなどの映像技術が劇的に進化していく時期を過ごした藤幡が1980年代に制作したアニメーションや映像作品と近年発表されたインスタレーション作品を展示し,新たな視点から藤幡の作品を紹介します.



os2015_20150413_04.jpg
高谷史郎《Toposcan / Ireland 2013》2013年
東京都写真美術館蔵 撮影:藤澤卓也

os2015_20150413_05.jpg
ビル・フォンタナ《ハーモニック・ブリッジ》2006年


高谷史郎《Toposcan / Ireland 2013》は,8面のディスプレイ内の端から端をゆっくりと往復する風景の映像が,線から紡がれ,やがてカメラが移動した時間の軌跡として定着されていく,デジタル技術によるあらたな視覚を提示します.
平川紀道は,宇宙や世界の成り立ち、仕組みを解明しようとする物理学などの知見を援用し,それをコンピュータ・プログラミングによる膨大かつ高速,精確な計算とその結果を用いた新作を含むインスタレーションを制作します.
ビル・フォンタナの《ハーモニック・ブリッジ》は,ロンドンのミレニアム・ブリッジ自体を巨大な弦楽器のようにとらえ,橋の構造の各部位に取り付けた振動センサーによって音を取り出し,通行者や風などによって生じる振動から音楽的な構成を作り出します.



os2015_20150413_06.jpg
和田永《電輪塔》2015年(参考図版)

os2015_20150413_07.jpg
クリス・ミルク&アーロン・コブリン《ジョニー・キャッシュ・プロジェクト》2010年


和田永は,オープンリール・テープレコーダーやブラウン管テレビなどの古い電化製品からオリジナルな楽器を生み出す和田のプロジェクト「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」から派生した新作を発表します.
クリス・ミルク&アーロン・コブリンの《ジョニー・キャッシュ・プロジェクト》は,世界中から投稿されたアニメーションのひとコマのアーカイヴによって、無数の作者による無数のヴァリエーションをもつミュージック・ヴィデオを生成するオンライン・プロジェクトです.
無響室は,Sachiko M大友良英のFilamentによる新作インスタレーション.従来の「作曲」や「即興」によって作られた音楽とは根本的に異なる音響体験をもたらします.



os2015_20150413_08.jpg

AKI INOMATA《やどかりに「やど」をわたしてみる -White Chapel-》2014-15年


新進作家紹介コーナー,エマージェンシーズ!,今年度初回はAKI INOMATA「Inter-Nature Communication」[2015年5月23日(土)―8月1日(土)]が展示されます.そのあと田中健司 [2015年9月8日(火)―11月15日(日)],大和田俊[2015年12月22日(火)―2016年3月6日(日)]と続きます.


たとえば,「車輪の再発明プロジェクト」に見られる,レコードやプロジェクションといったものの,機能を現在あるものとは別な形で実現する,あるいは別な形で実現されていたらという仮説は,今回の出品作品にも共通した姿勢を見出せるのではないでしょうか.もうひとつの記録や記述の仕方,かつてあった使用法とは異なる再利用の方法など.それらは,ひとつの道だけではなく複数の道へと通じる思考の開放であり,ひとつの方法だけにとらわれてしまうことで見えなくなってしまう隠された可能性へと私たちを開いてくれるように思います.


ICCは今年で開館18年目を迎えますが,メディア・アートも時代の潮流とともに変化し,そうした変遷の歴史を蓄積する,歴史化する必要にせまられるようになってきました.そうした中で,メディア・アートを先端的なテクノロジーによる芸術表現というだけではなく,それが同時代の表現や社会の動向とどのような関係を持ち,過去から現在への一連の時間の中にどう位置づけられるのかを考えることができたらと思います.


会期中には,アーティスト・トーク,レクチャー,シンポジウム,ワークショップ,パフォーマンス,毎月第三日曜日には,学芸スタッフによるギャラリー・ツアーなどの各種イヴェントを開催する予定です.館内の映像アーカイヴHIVEでは,ウェブで公開している映像以外にも,アーティスト,科学者,批評家などのインタヴュー映像,国内外のヴィデオ・アート作品などをご覧いただけます.
今年度も,夏休みには恒例キッズ・プログラムがあります.また,企画展は英国のアーティスト,ジョン・ウッド&ポール・ハリソンによる個展を予定しています.


(畠中実)


*関連イヴェントについて,詳しくはホームページなどで最新の情報をお知らせいたします.