佐藤様,浜野様:
こんにちは,中西@月尾研です.
浜野さん,はじめまして.
先日メールでお送りしました,現在取り組んでいるプログラムの内容と佐藤さんのご意見を照らし合わせてみたいと思います.
>「インターネット」では目には見えないもの,形のないもの,抽象的なもの
>から出発したい,と記しました.具体的には,変換のアルゴリズムそのもの
これに対する僕の考えが
「トポロジカルなネットワークを海市の上に投影する」というものなのですがどうでしょうか?
>ひとつはアルゴリズム自体を提示するということです.そして,もう一つ
>はアルゴリズムを適用するさいのパラメータの扱い方を提示するということで
す.
進化させる際のパラメータを参加者が提示するということは,それぞれの参加者一人一人が都市を進化させることになるので,会期中に一つの都市が変容していくということにはつながりません.
そうしたグローバルなパラメータも進化に大きな影響を与えますがそれよりも,もっと根底にあるシミュレーションのデザインによってどのような都市が現われるかが大きく変わります.
そこには「都市とは何か?」といったような仮説の下に要素間の相互作用を規定する,という作業があります.いくら相互作用を学習するにしてもパラメータを変化させても,何をどう学習させるかという目的や,相互作用の種類は,事前に決める必要があります.それらの設定が模擬実験をするにあたっては非常に重要です.
LシステムやCAでも書換規則を最終的なパターンの評価の仕方によって学習させることが出来ますが,それは要素の相互作用の仕方が空間的な分裂もしくは内部状態の書換と決定されているからです.植物の成長や物理現象の本質がそういうものであるという仮説のもとに,相互作用を決定しているといえます.
ですから,都市をシミュレーションするにあたっても,何らかの仮説が必要です.先日のメールの内容は,それを僕だけで決定してもよいのか?ということなのですが.
>ートしたものだと考えられます.この例では,あるアルゴリズムを建築の
>配置に適用したということ以上に,それに日照問題という社会的なコンテ
>クストのなかでの解釈をあたえたことが卓抜していると思います.
太陽都市でも「日照は生成的な建築物にどのような影響を与えるか?」 という実験の目的にCAを使用したということになります.ということは日照が都市としての建築物に大きな影響を与えるのだ,という仮説を持っていたということですよね?
現在作成中のシミュレーションは「インターネットを通じてネットワークとしてのトポロジカルな空間に,情報を外挿し続けることで会期を通じてある一つの見えない空間を進化させる」という事ですから,その仮説としては「メディアが発達するにつれて,ハードウェアとしての都市の形態が社会秩序を規定する力が減少し,ソフトウェアとしてのトポロジーが社会を変容させる力となり,都市の形態は見えないものとなる」ということになります.これで構わないのでしょうか?
>都市計画では伝統的に,土地利用計画とよばれる面としての計画と
>交通計画とよばれる線の計画が2本の柱です.前者はゾーニング,
>後者はネットワークの計画です.建築計画のレベルでは施設配置計画
>および動線計画とよばれます.「インターネット」のセクションでの
>シミュレーションがネットワークの作り方にたいしてなんらかの示唆を
>あたえることができれば,それだけでも興味深いことです.
磯崎先生の本などを読んで,自動車やメディアが作るネットワークによって都市の中にも空間的な関係よりもトポロジカルな関係が浮かび上がりつつあると解釈しました.その行き着く先が空間性を伴わないWWWであり,それが先生のおっしゃる「見えない都市」の一つの姿であると僕は感じています.
最近参加させて頂いたのがビジターズの会合だったからかもしれませんが見えない都市であるWWWで特定の場所のゾーニングと交通計画を見える都市の形態として語ることにずれを感じていました.
この企画の中の要素であるマスタープランの消滅,特定の個人による都市の計画の放棄といったものから,抜け出したいけれども抜け出せないというような印象を受けたので,先日のメールでのご質問をしました.
中西 泰人
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