ICC





アート&テクノロジーゾーンは,科学技術と芸術文化の対話を模索し,情報社会における芸術表現とそれをとりまく状況,その同時代の文化全般の表現様式や社会の推移を概観することができる展示エリアです.インタラクティヴ,デバイス,ウェブ,映像など,いくつかのテーマ/キーワードに沿って選ばれた,メディア・アートを代表する作家による作品を体験していただき,もっと深く知りたい方には1990年以降のメディア・アートとその周辺の社会的文化的動向を概観することができる年表もあります.ほかにも,沈黙を体験することができる音の反響を吸収してしまう素材で囲まれた部屋,無響室や若年層を対象としたプレイルームラウンジ,企業や公的機関や大学などの研究開発展示から,若手クリエイターの紹介および発表の場の提供まで,来館者への多角的な理解を促すことを目的として展開していきます.
展示作品/9作家,13作品
《境界線》
スコット=ソーナ・スニッブ
この作品では,他の人との間にふだんは見えないはずの境界が線として現れ,自分の領域が示されます.それぞれの位置に応じて境界線は変化しますが,その中心にいる人がつねに境界線にもっとも近くなるように決められています.
《無分別な鏡》
藤幡正樹
部屋の壁に鏡が取り付けられています.ほんとうの鏡ならば,鏡の中に自分が映りますが,この鏡には映りません.しかし,備え付けの眼鏡をかけて鏡をのぞくと,そこにはあなたのかけている眼鏡だけがあなたのいる場所に映っています.さらに,背後の部屋の空間も,まるで鏡の中の風景のように反転されて表示され,あなたの前後左右の動きに合わせて変化します.

《マシュマロスコープ》
《アナザータイム,アナザースペース》
岩井俊雄
白いマシュマロのような形をしたオブジェについたモニターをのぞくと,まわりの風景が,時間が行きつ戻りつするように変化したり,動いている人やものの形がゆがんだりして映っています.これはヴィデオカメラで撮影されコンピュータに貯えられた映像とその時間軸を,リアルタイムに操作,変形したものです.
《メディア・テクノロジー〜7つの記憶》
岩井俊雄
この作品は,ICC開館当初のコレクション作品として「一般の人々のメディア・アートやメディアを使ったコミュニケーションへの理解を助けるイントロダクションとしての性格」を持つものとして構想,制作されました.作品の中の標本箱に,フリップブック,フェナキスティスコープ(驚き盤),写真,テレビ,ヴィデオ,コンピュータ,オルゴール,という7種類のメディア・テクノロジーが収められています.
《loopScape》
クワクボリョウタ
本来「あちら」と「こちら」があるべき対戦型テレビゲームのフラットなディスプレイが,もしも円筒形になったとしたらどうなるでしょう? この作品は,ワイヤレスのコントローラを使って,ふたりのプレイヤーが円筒形のディスプレイのまわりをぐるぐると動き回りながら体験する,ちょっとかわった対戦型ゲームの姿をしています.
《FragMental Storm 02》
エキソニモ
ユーザーが打ち込んだ任意のキーワードが検索エンジンを経由して,ウェブ上で見つかった複数のサイトの図版やテキストをランダムに表示していくソフトウェア《FragMental Storm 02》のインスタレーション版です.お好きなキーワードを打ちこんでみてください.
《A-Volve》
クリスタ・ソムラー&ロラン・ミニョノー
これは,自由に形を描いて作り出した人工生物を棲息させるための水槽です.人工生物は現実と仮想の環境に適応しながら,互いに影響を及ぼし合い,その形が環境に相応しいと長く生き続けます.また,生物どうしは,子供を産むこともあれば,強いものが弱いものを食べてしまうこともあります.
《ジャグラー》
グレゴリー・バーサミアン
空中に投げられた物体や曲芸師(ジャグラー)は円筒形のフレームに接続され回転していますが,点滅するストロボ・ライトが照らすときしか眼に見えません.そうすると,アニメーションと同様に,動きのない物体に時間が与えられ,実在しない「動いている」光景に見えるのです.
《onebuttongame_Ball》
《onebuttongame_Blanco》
《onebuttongame_Trampoline》
perfektron
たったひとつのボタンだけを操作して楽しめるゲーム.
タイミングをあわせてボタンを押すことで,ブランコを大きく揺らしたり,トランポリンで高く飛び上がったりすることができる,集中や熱中することなしに,なにげなく楽しむことができるゲームです.
無響室
無響室は,部屋全体が音の反響を吸収してしまう素材で囲まれています.
わたしたちは通常,周囲の空間の広さなどを音の反射によって把握しています.しかし,この音の反響や反射がなく,外部の音からも遮断された特殊な空間では,自分の位置を空間の中に定めることができない状態になるため,音響的には空間の中に宙吊りになっているのと同じことになります.
新進アーティスト紹介コーナー
「エマージェンシーズ! 」
「エマージェンシーズ!」は,これから期待されるアーティストやクリエイターの最新の作品やプロジェクトをいち早く展示するコーナーです.年間3,4回のペースで,アートや科学の新しい可能性を開いていく実験的な表現を幅広く紹介していきます.メディア・アートにおいて現在生まれつつあるものをリアルタイムで体験いただくとともに,それらを生み出すアーティストたちの発想の源泉に触れていただく場となることを期待しています.
インタラクティヴ年表(1991—2005)
これは1991年以降のメディア・アートにおける重要な作品や展覧会を,社会や技術の動向と一緒に紹介するインタラクティヴな年表である.