ICC




《loopScape》
2003
クワクボリョウタ
本来「あちら」と「こちら」があるべき対戦型テレビゲームのフラットなディスプレイが,もしも円筒形になったとしたらどうなるでしょう?  この作品は,ワイヤレスのコントローラを使って,ふたりのプレイヤーが円筒形のディスプレイのまわりをぐるぐると動き回りながら体験する,ちょっとかわった対戦型ゲームの姿をしています.
この円環をなすループ状のディスプレイでは,自分の発射した弾が相手に命中しなければ飛び続けてしまい,自分の発射した弾に背後から攻撃されてしまいます.そのため,必要以上に弾を発射してしまうと,自分の身を危険にさらすことになってしまうのです.また,自分や相手の姿を追うためにプレイヤーはディスプレイのまわりをぐるぐる回りながら操縦しなければなりません.しかし,ふたりのプレイヤーは体を動かしながら,どことなくスポーツ感覚でゲームに興じることができます.こうして「あちら」と「こちら」をつなげてしまう,という発想の転換によって,従来の対戦型ゲームがもつ性質ががらりと変わってしまいます.
クワクボリョウタは,1998年より主にエレクトロニクスを用いた作品の制作を行なっている.その作品は,ガジェットの体裁をとりながら,デジタルとアナログ,人間と機械,情報の送り手と受け手などの境界線上で生じる現象をクローズアップする.作品制作の他,メーカーとの共同開発なども手がけている.
デバイス
メディア・アートでは,コントローラなど作品のインターフェイスを制作することもアーティストの制作の一部になっています.このような既存の機材を使用するのではなく,自作した装置(デバイス)自体が作品であるような作品をデバイス・アートと呼んでいます.そこでは鑑賞者がその楽しみ方を作り出していくユーザー的な立場になるような,プラットフォームとしての作品のあり方が提示されています.