「耳奏耳(みみそうじ)シリーズ」は,自作の耳型マイク装置「擬似耳(ぎじじ)」を用いたマイキングの実験的な音楽作品シリーズです.
おおしまたくろうは,録音における音源とマイクの距離や角度の設定および配置などを考慮するマイキングという技術に関心を持ち,そうした録音工程は,主観的に感じている音を客観的に捉えなおす,イヤー・クリーニングでもあると考えています.
コロナ禍中に発表された《帰省されるイヤー》は,おおしま自身の耳をかたどった大きな耳型のマイクを耳かきで演奏するというパフォーマンスです.それによっておおしまは「楽器としてのマイク」の可能性を見出し,続く《擬似耳人 鴨江アートセンターのための2階建ての回旋曲(ロンド)》では,演奏者となる二人がそれぞれ左右の耳の形をしたマイクの帽子をかぶり建物の中を移動することで,「街や建物の空間を楽譜(および演奏対象)と見立てる」ことを試みています.新作の《レコードRAM缶・レコードROM缶》は,繰り返し録音可能だが,最後に収録された音源しか再生することができないRAM缶と,いちど録音したら書き換え不可能なROM缶の2種類のデヴァイスによって「マイキングのライヴ性」とは何かを問うています.
協力:一般社団法人HAPS,浜松市鴨江アートセンター
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