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イヴェント・レポート スタッフ・ノート

「さうんどまっぴんぐ ワークショップ——みえないもの,きこえるおと」レポート

2025年10月28日 12:20

ICC キッズ・プログラム 2025「みくすとりありてぃーず——まよいの森とキミのコンパス」の関連イヴェントとして,8月11日(月・祝)に情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] の学生の方々が中心となって開催した,「さうんどまっぴんぐ ワークショップ——みえないもの,きこえるおと」について,当日の様子をお伝えしていきます.


今回ファシリテーターを務めたa-semiの皆さんはIAMASの在学生で,今年度のキッズ・プログラムの共同キュレーターであり,AR技術を用いた音声ガイドのシステム,AR Audio Guideの開発を監修している赤羽亨さんの教え子でもあります.

イヴェントの冒頭で,赤羽さんから参加者であるお子さんたちに向けて,キッズ・プログラムの展覧会会場で貸し出しが行なわれていたAR Audio Guideについての紹介がありました.このワークショップでも,AR Audio Guideの端末とシステムが用いられ,その仕組みを子供にも理解してもらえるよう設計されていました.

 

赤羽亨さん(一番左)とa-semiのメンバー3名

 
 

左からa-semiの光野るなさん,ラフマット・ムハマド・フィクリ・ジクリさん,北島慎也さん

イヴェント会場の床には,1〜16の数字と,それを囲む正方形の白い枠が一定間隔で並んで示されていました.数字ごとに異なる音が仮想空間上でマッピングされており,AR Audio Guideとイヤホンを身につけてその枠のエリアに入っていくと,車の走行音や踏切の警報音など,街中の環境音が聞こえるようになっています.視覚的には床面の数字と白い枠があるだけですが,並んだ白い枠が街の区画のようになっていて,各所で聞こえる音から,学校や公園があって,近くに川が流れていて…など,街の姿を想像できるよう設計されています.

 

イヴェント会場の様子

 
 

AR Audio Guide用の貸出端末

その仮想の街の中を歩き,聞こえてくる音から目に見えない街のマップを作っていき,さらにこの街の中で自分が1日を過ごしたら,を想像して絵日記を描いてみるというのが,このワークショップのゴールとなっていました.

 

絵日記のワークシート

参加したお子さんたちには,各自AR Audio Guideの端末とイヤホン,クリップボードが配られました.

最初にAR Audio Guideの使い方や仕組みを理解するエクササイズとして,まずは音が4ヶ所の枠内だけで聞こえる状態で,その中を順番に歩いてみることから始めていきました.白い枠が並んでいるエリアに入っていく前に,端末のカメラで特徴点となるイラストが描かれたマーカーを読み取っていきます.そこで特定の音がイヤホンから聞こえると,AR Audio Guideが正常に動いていることが確認できるようになっています.

ファシリテーターが近くでフォローをし,音の聞こえ方を確かめながら,多くの子が早い段階でAR Audio Guideの使い方を直感的に理解できている様子でした.

 

 
 

 

 
 

次のステップでは白紙のメモ用紙が配られました.ステップが進むごとに異なるイラストのマーカーが用意され,違うマーカーを読み取ることで,マッピングされた音の位置や種類が変わっていきます.この時は3ヶ所の枠の中で音を聞くことができ,それらが何の音で,どんな景色が想像できるかを考えながら,言葉やイラストをメモにかき込んでいきます.お子さんたちからは,場所ごとに猫の鳴く声や風鈴の鳴る音が聞こえたなど,具体的なイメージが共有されました.

 

 
 

特徴点として用意されたマーカー

 

 
 

そしてこれまでのエクササイズを元に,ワークショップのゴールに向けて,音の情報から仮想空間全体のイメージを作っていくステップに入っていきます.最後は16の枠全てに音が充てられており,その中を歩いてマップの完成を目指します.ただし,はじめは16のうち音が聞こえない場所がいくつかある状態となっていて,街の全ての音を聞けるようにするためには,お店屋さんを4つ探し,そのお店の人からヒントを聞くことで,音が聞こえなかった場所で音が聞こえるようになる,という仕掛けになっていました.そのヒントや,聞こえた音についてメモを取りながら,各自で街全体のマップ作りを進めていきます.

すでにAR Audio Guideを使いこなしながら,お子さんたちが各自音が聞こえる場所を探り,黙々とメモを取っていっている姿が印象的でした.時にファシリテーターと会話をしながら,この音が聞こえるのはどんな場所か,自分なりに想像をふくらませていきます.

 

 
 

 

 
 

マップがある程度完成してきたら,自分ならこの街でどんな1日を過ごすかを考え始め,メモを見返しながら絵日記にまとめていきます.「踏切を渡った先にある滝を見に行った」や,「家の縁側で,風鈴の音を聞きながら犬と過ごした」など,具体的な情景を絵と言葉で表現してくれていました.絵日記の内容を共有してくれた子は,「自分が好きな図工のクラスが多い工作の学校」というテーマで絵を描いてくれました.

 

 
 

 

子供たちが音だけをヒントに各自でイメージをふくらませ,絵や文章で表現しようとしている姿を見て,今回のワークショップが,学校教育の枠だけにはまらない想像/創造力を創発する機会になっているのではと感じました.また,AR Audio Guideの展示以外での展開の幅も感じられ,AR Audio Guideで出来ることや技術に対する理解を広く伝えられる方法として,とても良いワークショップだったと感じました.


【開催概要】
ICC キッズ・プログラム 2025「みくすとりありてぃーず——まよいの森とキミのコンパス」
開催期間:2025年8月8日(金)―9月15日(月・祝)[展覧会は終了しました.]
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]  ギャラリーB,ハイパーICC
開館時間:午前11時—午後6時
入場無料
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共同キュレーション:赤羽亨(IAMAS),鹿島田知也(ICC)
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主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] (NTT東日本株式会社)
協力:情報科学芸術大学院大学 [IAMAS]
後援:渋谷区教育委員会,新宿区教育委員会,中野区教育委員会,文京区教育委員会



[M.A]