チャンネルICC
「チャンネルICC」内のポッドキャスト・サーヴィスで,「オープン・スペース 2017 未来の再創造」出品作家のオーラ・サッツのインタヴューを公開しました.インタヴューは英語ですが,この記事ではインタヴュー内容の抄訳をご紹介します.
「オープン・スペース 2017 未来の再創造」出品作家インタヴュー
オーラ・サッツ
今回ICCでは,《銃弾と弾痕のあいだ》という映像作品と,レンチキュラー印刷を使った《銃弾と弾痕のあいだで揺らめいて》という作品を展示しています.
この二作品は,コンピューティング黎明期とそれに女性が関わっていたことに触発されて制作したものです.詳細に資料に当たったわけではありませんが,1940年代半ばの米国で,数名の女性がENIACという世界最初のコンピュータのプログラミングを担っていたことが制作のきっかけになりました.
彼女たちが弾道学に携わっていたことに興味をもちました.機械としてのコンピュータが誕生するより前,「コンピュータ」という言葉は「計算する人」を指していました.ここでは,銃弾の軌跡を計算によって求めた人たちのことです.また,女性たちがごく初期のコンピュータおよびプログラミングに非常に大きな貢献をしたにもかかわらず,歴史からほぼ忘れ去られ、さらに上書きされた末に,つい最近になって再び見出されたということにも,とても興味をひかれました.
しかし,プロジェクトに取り組むうちに,歴史ドキュメンタリーのように個々の女性たちに焦点を当てるというよりも,彼女たちがやっていたこと,つまり銃弾と弾痕のあいだの軌跡を計算することの裏にある理念のほうを描きたいと思うようになりました.また,弾道計算の過程そのものが,バイナリ・コード——さらに言うならば0と1,ポジとネガ,不在と存在など——と似ている点があるのではと思いました.というわけで,この映像作品では,全編を通じて,二項対立する二つ一組のデータが繰り返し登場します.そして映像の形式としても,二項対立的要素を明確に打ち出そうとしました.フリッカーを多用し,バイナリ・コードの0と1のあいだ,銃弾とそれが作る弾痕のあいだ,またはそれ以外の多数の画像のあいだで,フレームごとにちらついたり揺らめいたりしているように見せているのはそのためです.
この作品は,ヴィジュアル,サウンドのどちらにおいても簡単に要約することができません.ヴィジュアル面では,フレームの連続性を壊して流れを不確かにしています.サウンド面では,作曲家のスキャナーとコラボレーションを行ない,カタカタという音や.一定しない激しい衝突音を入れました.その結果,非常に記憶に残りにくいサウンドになり,リズムも一定ではありません.だから,いろいろな意味で把握しにくくなっていると思います.
映像で起こっていることを別の形で表わすのに,レンチキュラー印刷はぴったりだと思っています.レンチキュラー印刷では,一枚の印刷がそれぞれポジとネガ,この作品では銃弾と弾痕の二枚のイメージでできています.鑑賞者が向かい合わせになった二枚のプリントのあいだに立つと,両方を同時に見ることはできません.ですから,一枚のプリントから向かいのプリントに見る位置を移動したり,同じプリントを見ながら左右に動いたりすると,二つの空間のなかで絶えず揺らいでいるイメージに対することになるので,単なる視覚的効果だけでなく,コンセプチュアルな面で,作品にある種の「気配」を与えていると思います.
オープン・スペース 2017 未来の再創造
会期:2017年5月27日(土)—2018年3月11日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
開館時間:午前11時—午後6時
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日.なお,2/12[月]は休館,2/13[火]は開館),保守点検日(8/6,2/11),年末年始(12/28-1/4)
入場無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
[Y.Y.]